あたろーの日記
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仕事を終えて帰宅する時間にまだ外がそう暗くない日には、会社から自宅に向かって、歩けるところまで歩いて帰る。 途中タカシマヤタイムズスクエアの方から新宿に入り、西新宿の方向、それから超高層ビルの群れの下を、頭上を仰ぎ見ながら歩き続ける。ビルの谷間を抜けて、やがて新宿を出るまで、あのキッチュで猥雑で派手で飾りたてて薄汚れた喧騒の中を、歩き、立ち止まり、歩き、振り返り、歩き続ける。 道行く人、すれ違う人、交差する人、ビルの中に入っていく人、道端に座り込んでいる人、たむろしている人たち、ダンボールハウス、傘を重ねて作った屋根。。。 それぞれに、さまざまな人生を抱えて、小さな秘密を抱きしめながら、誰にも話すことのできない痛みに耐えながら、ときどきふと、空を仰いで、雨雲がいつ冷たいしずくを落とし始めるだろうかと不安にかられ。。 ためしにその中の誰かと路上でぶつかってみれば、きっと、落とした袋の中からぎゅうぎゅうに詰まった人生のかけらがぽろぽろとこぼれて、いちいち拾い上げるのに苦労する。拾っているうちに交差点の信号は赤になり、とりかえしがつかなくなりそうで、だから、都会では誰もがかたくなに自分の荷物をぎゅっと胸に抱きしめて、守りながら歩いていく。 もし、腕の中の荷物が何かにぶつかって、はじけて、かけらが路上に飛び散ってしまったら、その、行方不明になったかけらをずっとずっと探し続けながら、いつしかその場所から離れることが出来なくなる。 かけら、探して、ずっと、さがして、いつしか空から落ちてきたつめたい水を、すきまのできた心の中に、ちょっとずつ、ためこんでいく。 つめたいみずを、ためこんでいく。。。
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