あたろーの日記
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2006年11月17日(金) 『サイレント・ジョー』『夢十夜・文鳥・永日小品』

 旧暦9月27日。
 一昨日からかかって、『サイレント・ジョー』(T・ジェファーソン・パーカー作/搦理美子訳/ハヤカワ文庫)と、『夢十夜 他二篇』(夏目漱石/岩波文庫)を読み終える。
 『サイレント・ジョー』は、ほんとうによかった。面白かった。主人公のジョーは24歳。保安官補として刑務官の仕事をしている。赤ん坊の頃、父親に硫酸を掛けられ、顔半分は何度手術しても残る傷痕で覆われている。5歳の時に、彼を施設から引き取り、愛情ある家庭で育ててくれた養父は政界の実力者。しかし、ある日、誘拐された少女を助けた後、彼はジョーの目の前で、射殺されてしまう。ジョーは父を殺した犯人を挙げるべく動き出すが、それは同時に、亡き父がジョーに隠し続けてきた暗部をえぐり出していくことにもなる。。。というストーリー。様々な人間くさい人間が出てくるが、ジョーの人間としての魅力が、この小説に読み手を引きつけて離さない一番の理由かも。
 漱石の文章は、やはり味わい深い。もう、あんな文章、とうてい真似なんか出来やしない。「夢十夜」「文鳥」「永日小品」。特に「永日小品」の中の「行列」「心」を読んでいると、初っぱなから、漱石の文章の流れるような言葉の連なりに、飲み込まれてしまうような快感がある。息が詰まるようだ。そして、溜息の連続。どの作品も短いものだけれど、読み手を次々とその物語世界へ引っ張り込んで、周りの空気感まで変えてしまう作家の魔術。
 
 
 


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