浪漫のカケラもありゃしねえっ!
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| 2002年11月23日(土) |
キャッチ・ザ・レインボウ
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いつもタイトルと裏腹に浪漫の気配のあまり漂わない日記ですが、たまには浪漫モードに走ったお話でもいたしましょうか。(^^;) しばらく前の話ですが、雨雲のたれこめた晴れ間に見事な虹の見えた日がありました。 3重の虹はひさしぶりに見ました。こんなに見事な虹を見たのは99年の秋以来だと、あの当時のことを思い出して感慨がわきました。 ちょうどJRに乗ってた時で、虹はいつまでも斜め前方にありました。ロニーの歌う「キャッチ・ザ・レインボウ」が思わず脳裏に流れ、山間に消えてはあらわれる虹をずっと見つめていました。 山の中を縫うように走っていく鉄道です。1〜2カ月前には真っ赤な曼珠沙華が咲き乱れたあぜ道は、今は枯れはじめた草の色が見えます。黄色や赤に色づいた山の木々には、ここしばらくの強い風に散りかけたものが目立ち、くすんだ冬の色合いにとかわりはじめています。 その晩秋の寂しい光景の中に現れた、クッキリとした鮮やかにまばゆい光のグラディエーション。空の半ばは渦巻く灰色の雲。常緑樹や草むらに残った緑が、雨に洗われた後の鮮やかさで、虹を生んだ陽光に照らされています。 虹の端が地面につく辺りは、本来の色彩を薄れさせ、まるで光に焼かれているかのよう。それが列車の動きとともに、ジリジリと山間の家の間を動いていくのです。 あの光の中を通った人は何か不思議なチカラにふれられた感覚を抱いてはいないだろうか、なんて夢想してみたり。人が自然に「神」を見出し「神話」や「奇跡」を作り上げたのは、このような「しるし」を目にしたときだったろうか、と考えてみたり。 不思議なことに、数十分たっても虹は消えません。時に薄れ、時に鮮やかな光を取り戻しながら、いつまでもいつまでも目の前にあるのです。その不思議を、後からこわいとさえ感じました。魅了され、魂を吸い込まれそうな、あまりにも美しい、あまりにもあざやかな、その光。 けっしてつかめるほどには近寄ってこない。近づけば距離を置き、静かに遠のき逃げていく。けれど、導き誘うように、そこに姿を現している。出会いたいと願っても出会えず、予想もしなかった瞬間に現れては、人を魅了していく。ああ、なんとむごいほどに美しいものが、人の世に存在することか。 人の心に生まれる「夢」のように、「希望」のように。
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