浪漫のカケラもありゃしねえっ!
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2003年02月01日(土) 物語は老いない

本の山が崩れたので、『銀の三角』が出てきた。もう何十回と読んでいるのだが、目の前にすると読みたくなり、ストーリーを承知しながらも読めば必ず涙することになるのだ。こういう傾向は他の作品でもあって、クーンツ『ウォッチャーズ』のアウトサイダーの洞窟だとか、わかっちゃいるけど止まらないんだよなあ。(『ウォッチャーズ』は、ほとんどの人にとって泣ける作品らしいが)
「夢も歌うことを覚えた。耳をそばだてておくれ」架空の存在、紡がれた夢の中に生きるモノに涙する心地は、作品世界の中の夢と創作物を読むことの、二重の意味をもって迫ってくる。
奥付を見て愕然とする。【1980年】ですと。ふう、ちっとも古びてねえ。20年たってる作品だなんて、とても思えないや。
あー、そういえばSFマガジンを立ち読みして「こりゃあ連載完結しなけりゃ頭こんがらがるわ」と思ったのが学生時代。ということは、『百億の昼と千億の夜』や『スターレッド』はもちろんもっと前。『ポーの一族』『11人いる!』あたりになると、かれこれ30年はたたないか?
それにしても、ミューパントーとラグトーリンの印象的な表情には、いつも息をのまされる。
ラグトーリンの微笑みに、ふと『百億の昼〜』の阿修羅王を連想する。転輪王となった阿修羅王、時空のひずみと惑星開発委員会。かつて描きはった光瀬龍作品のイメージが、少し影響を与えているのかと今になって思う。
『左ききのイザン』『東の地平、西の永遠』など、たしか共通するキャラも出ていたはず。致死因子はその他のSF作品群にも出てきたテーマだ。読み返したい作品がどんどん思い浮かぶ。
本棚をかき回して昔のマンガを引っぱり出してみる。『樹魔・伝説』『ワン・ゼロ』....SFモノは、少女マンガの世界にもけっこうあったなあ。当時の少年マンガより本格的なSF色の強い作品が見られたかもしれない。
『エロイカより愛をこめて』。うー、西独もソ連もなくなっちまってるから古さを感じさせるけど、これはその時代を織り込んだ防諜モノの宿命か。今読んでも、ストーリー自体は面白い。コレもかれこれ20年以上前の作品と思えないよなあ。
そいえばこの前、『ジャッカルの日』をあらためて読んだのだった。おかげで夜明けまで本を置くことができなかったですよ。すぐれた物語は、時代を感じさせる古色をおびることはあっても、けっして老いたりしない。いつ読んでも血を熱くさせてくれる。実感しましたわ。


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