電車の中でケーキの箱を大事そうに抱えて帰る男の人がいた。 誰と食べるのかは知らないけど、すごく大切そうに抱えていた。 忘れられない思い出として残るのではないのかな? きっといつか思い出した時に、涙が出るくらいの。 電車の揺れに耐えて、ケーキの形が変わらないようにしっかり吊革を持つその手はまるで戦いの前の戦士のように勇ましかった。 誰かのために、誰かを想う故に出来るあの姿は今の僕には出来なくて・・・。
優しさの中に厳しさを持つような人に憧れる。 自分に厳しく他人に優しい人に憧れる。 無邪気さや、素直さや、優しさを持ってる人に憧れる。
電車は激しく揺れていたが、微動だにしない体と、意志の強い眼差しがすべてを語っていたように思う。
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