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2003年03月30日(日) 桜の木の下で

春の足音が聞こえてくる季節になるといつも同じ恋の終わりを思い出してしまう。
その恋は桜が咲く頃に想い、桜と一緒に散ってしまった。そんな一瞬の出来事。片思いのようで、違ったりもした桜の季節の恋。
週末になるとどこかに連れ出して二人で歩いた。まるで恋人のように。自分の想いは隠しつつ。だましつつ。自分の気持ちに嘘を付いて。
互いに嫌いではなかったから週末にいつもの場所で待ち合わせてそれから色んな所へ出かけた。桜の景色がそこにはいつもあった。
それがいつしか恋へと変わっていくことを僕は知らなかった。想いを伝えることは出来なかった。春のイタズラな風に邪魔されて。
僕がそんな風に躊躇っている内に彼女は僕の元を離れてた。春の麗らかな風と共にサヨナラを言った。自分の勇気のなさにひどく後悔した。どうしようも無い感情が胸の中を動き回ってはグチャグチャにしていった。そして一人で涙を流した。桜が綺麗すぎるからという言い訳を作って。地面に落ちた桜の絨毯は僕をドコにも導いてはくれなかった。
2年後・・・。ふとを思いだした。ただの思い出として。微笑ましい思い出として。心に残るストーリーとして。
桜を眺めていた。左手の中に小さな手を握りしめながら。
『何考えてるの?』と、僕の方を見ないで桜を眺めながらそう言った。
『僕の過去のコト知りたい?』と聞いてみた。
『別にーーー!』といつもの口癖を言いながら意地悪そうな顔をした。
『ねえ、来年もその次もずっと一緒に桜を見に来ようよ』
『何をいきなり言ってるの?』
『離したくないから』
『うん』と小さく頷いた。瞳は僕をしっかり見つめて意志は強そうに見えた。
そしてしっかりと小さな左手を握りしめた。
桜が舞う季節になると決まって思い出すストーリーがある。少し幼いけれど、誰もが経験するような甘酸っぱいストーリー。勇気がないこと、伝えられないもどかしさがあること、恥ずかしさが勝って素直になれないこと・・・。やがて時が経ってその事を懐かしく思って微笑んだ時は桜の木の下で好きな人に話してみよう。
こんな話があるって。
いつまでも一緒にいられるオマジナイだと言って話してみよう。


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