not ready

2003年04月03日(木) 桃色

「遅い!」と呟いた。
少しだけ、ほんの五分なのにかなり怒っている。
「ごめん」と取り繕うことしかできない。
下らない冗談を言って誤魔化した。それできっと気分は晴れる。君も、僕も。
二人ともずっと上を向いていた。
桃色の雨が舞い降りては幸せな気分にしてくれる。傘はささない。
心に積もらせるようにする。目にずっと焼き付けとくためにシャッターを自らの目で押した。
二人を遮るものなんて一つもない。不安もない。
時に心配したりするけれども、それはそれでイイのだとも思うから。
短い時の流れに、何億人といる人間の中で、二人は実に綺麗に重なっている。
同じ時を刻んでいる。
「お腹減ったよ!」と桜を見ながら彼女は言った。顔は笑っていた。太陽の光と混ざり合い眩しくてその顔を見ることはできなかった。
「そうだね」と言った。彼女の顔を見ながら。するとこっちを向いて
「うん」と笑いながら、とても幸せそうな顔をして言った。

僕たちは足跡を付けていく。何処にも帰らない。どこにも行かない。
ただ桃色の雨を見ながら。傘はささないで。
ただトコトコと。


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