真っ暗な部屋にいる。何も見えない。 独りこの部屋で星空さえも見えないこの部屋で、ナイフを見つめている。 優しく木々の葉を揺らしている風だけが微かに聞こえるだけ・・・。 朝を迎える少し前の時間、空白の時間、皆が夢を見ている時間。 僕だけがこの世の中でたった一人生きているような気分でナイフを見つめている。 生と死の狭間で、僕はただ生を感じていた。死を目の前にして。 僕の命を僕が弄んでいる。ナイフの冷たくて尖った感触が首筋をなぞる。 赤い血潮はまさに生への証明だった。操作できる喜びでもあった。逆に胸の鼓動は高まっていく。生を象徴していた。 真っ暗な部屋にいる。何も見えない。 そこにはただ、赤い生が転がっていた。
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