not ready

2003年05月02日(金) 金曜日

金曜日は何処にも寄らないで家に帰ってゆっくりしたい。しかし理想と現実は上手くは重なってはくれない。それが金曜日の宿命でもある。

仕事を終えデスクを立つと上司が手で形作ったグラスを口に持っていく仕草を二回繰り返す。『飲みに行くぞ!』の合図。金曜日になるとデスクを立つのが嫌になってしまう。毎週、今日こそは誘いは無いように!と願ってから席を立つのだが、いつも引っ掛かってしまう。今日もデスクを立つと当然の様に上司の姿が・・・。
 飲みたくもないアルコールを飲まされ店をハシゴする。結局帰る頃には終電がなくなって酔いも醒める様な寒さの中でタクシーを待つ。金曜日はこんな人間ばかりだ。寒さの中で人生の苛立ちをおぼえる。
 
自宅まで1時間弱、タクシーの運転手はさほどおしゃべり好きではないようだ。
徐々にスピードを上げていく。しかし、運転が荒い訳でもなく、むしろ後部座席に座る自分への子守歌代わりの緩やかな揺れを感じさせてくれた。その誘いにつられてしまう。街灯の光がだんだん薄くなっていく。瞼は重力に耐えきれなくなっている。−いつの間にか夢の中へ連れていかれた様だ−

目を覚ました時にはもう朝だった。しかも自分のベッドの上で。タクシーに乗っていたハズの自分が???
テーブルに目をやると置き手紙があった。
”お疲れのようですね。今日はゆっくり休んで下さいね。さすがに少し重かったです。熟睡されていたようなので、背広のポケットから鍵をお借りしました。ここに置いておきます。お代の方は今度私の後部座席に乗ったときにまとめてお願いします。次回は寝ないように!親切なドライバーばかりではないですから。それでは失礼します。ドライバー倉橋。”

ビックリした、本当に鍵は置いてあった。−参ったな−
これで金曜日の上司からの誘いはますます断れなくなりそうだ。
来週は私からグラスを手に持つ仕草をしてみよう。

窓を開けると爽やかな風が吹き込んできた。クラクションの音が2回鳴り響いた。心地よい目覚めだった。


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