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2003年05月31日(土) 血 −1−

おいらの遠い昔の、昔の、昔の、昔のじっちゃん・・・。
まっ先祖ってヤツなんだけど・・・。
そのじっちゃんは人を殺して、自分は生きようとした。
そんなん仕方のないことだったんだ、少し昔までは。
何人も何人も殺して来たんだ。
もともと人間は「狩り」をしながら生き長らえてきた訳で・・・。
つまり、おいらもその「狩り」をしていたじっちゃんの血を受け継いでるんだ。
・・・生き残りがおいらなんだ。

おいらは「狩り」に出るんだ!
生き長らえる為に。
生きるんだ。

「健二?おいらだよ!おまえ今どこいるんだよ!聞いてくれよおいらの話。昨日夢でさ何か変なこと聞いたんだ。あそこの森あるだろ?そこに銃が落ちてるから取りに来い!って遠くの方で誰かがおいらに言ってるんだよ。何回も。嘘じゃネーよ!本当だって!もし嘘だったらおいらをその銃で撃ってもいいんだぜ!まっだからよ、来いよ!森に。学校なんてどうでもいいから!来いよ!森だぞ!急いでな。おいらはもう向かってるから。じゃあな!」

森へと少し急いだ。少しまだ風が冷たくて心地よかった。まるで風までもおいらのことを後押しするように。何とも言えない胸の高鳴りを抑えきれずに森へと急いだ!狩りをするじっちゃんはどんな気持ちでいたんだろ?こんな気持ちはあったんかな?ぎゅっと握っていた手のひらはジットリと汗で濡れていた。もう少しでじちゃんを越えられる気がしてならなかった。

「健二、遅えよ!待ったぞ。そんでよ、夢ではこっから20分くらい歩けばあるって言ってたんだ。大きな木の根本にあるから!って。大きな木って言ってもな・・・っこらへんそんな木ばっかじゃねーか!探してみようぜ!とりあえず20分ぐらい歩いてみっか!」

「健二、あったぞ!マジであったよ!おいらの行った通りじゃネーか!おまえ疑ったよな!信じてなかったろ?おいらは今からじっちゃんの様な猟師になんだ!健二、おまえはそういう血が流れてねーのか?おいらは健二を殺せるんだぜ!この銃で。どうするよ?恐いか?」

一人目の仕事が終わった。おいらこれから猟師として、生き長らえるためにこれからもこうしてやって行くんだ!戦え!生きるんだ!そして猟師を全うしたら死んでも構わない。

人間は進化していった。殺しのない世界を願った。平和を祈った。
科学はどんどん進歩した。ある日、小さな発明家は小さな発見をした。
それがどんどん大きくなって大きな発見となった。
やがてその発見は恐ろしい凶器を生み出してしまった。その凶器は人を殺すことができる。おいらにはその発見はできないけど、その凶器を使うことは出来る。そして、その凶器で人を殺すこともできる。
ちょっと引き金を引くことで・・・。
自分の命だって・・・。
人間は進化していった。本能の「狩り」をすることを忘れるように。すこしづつ進化し、変化していった。ある日その「狩り」を思い出すことがあるけれど、それはほんの、本当に一瞬で、進化によって生まれた脳でそんなことは止めようと踏みとどまる。おいらは少しだけ他の人と違っていたのか?
それともおいらの全ては変化や、進化を拒んだのだろうか?

・・・今おいらは自分のこめかみに銃を・・・。


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