独白「文字式」

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2002年05月21日(火) 商業詩人の夜明け(ぽえむばざーる編11)

エポックメーキング
それは、急にやってくるのである。

「ぽえざる」会場入り以来、
その雰囲気にややのまれた状態のまま、
主催者の一言を皮きりに
本格的に「ばざーる」がはじまった、のだが、
いまいち、何をしていいのかがわからない。

本を売りにきたのは良いとして、
派手に声を出して呼びこみをするわけにはいかない。
よくよく考えれば(考えなくとも)
詩の読み書き、は肉体的には静かな活動であり、
よって、詩売りの方々も物静かな方が多い。

静かで、しかも、食堂という閉じた空間の中で、
自分の声だけが響いているのも嫌である。

とはいえ、ぼんやり座ってるだけでは、
はなから勝負にならない。
机に並んでいる売り物は一つだけ、
しかも白地に墨文字の、ワードで作成した地味な本である。
売り子(わしだ)を含めて実に華が無い。

で、しょうがないから、一人、小さな低い声で
「安いよ〜、安い詩集あるよ〜」と
ダフ屋(ないしはポン引き)の真似をして
遊んでいたりしていたのである。

「これはまいったぞ、千葉から大阪まで来て、
ダフ屋のまねをして終わってしまうのか」
と、途方に暮れていたとき、
ふらりと、私の店の前に、
一人の女性が現れたのであった。

その方は、
私の本を静かに、そしてじっくりと
1ページから読みだした。

最後まで読み終えた後、
そっと机の上に本を置いたので、
固唾をのんで見守っていた私も
お見送りの体制にはいった。

ところが、耳に入ってきた言葉は、
「この本、いくらですか?」

おおっ。

まさに、この瞬間、
今まで眠っていた商人の血が目覚めたのであった。

(そして、この話は、また明日以降も続いていく。)


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