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| 団地の迷子 2002年02月09日(土)  | 安野モヨコさんが「団地って死角がなくて恐い」と何かに書いていたけれど、すごく同感だ。同じ作りの四角い建造物がずらりと20、30と整然と並んでいて、なんとなくプライベートとか秘密とかそういうものを保持できなさそうな感じ。誰に見られているか分からない、そんな恐さ。 私は団地には住んだ事はないけれど、よく団地に住んでいるお友達の家には遊びに行った。団地のコ同士でお泊まりしたり、いつでも自然に集まって公園で遊べたり、そういうのが羨ましく思えたけれど、オトナの立場から見ると、なんとなく逃げ場がない気がしてしまう。 ドイツのマインツ大学のサマープログラムに参加した時の事。ひとりでフラリと校外に出て歩いていたら、真剣に迷子になってしまった事がある。夕方前の時間で、歩いても歩いても見覚えのある校舎とかお店がなくって途方に暮れてしまった。歩き疲れて立ち止まると、そこは日本の団地と何ら変わらない団地の風景の中に私はいた。誰かに道を聞こう、と思って人影を探すのだけれど、人っこ一人おらず、がらんとしている。こんなに密集して人が居住する筈の場所にこんなにも人がいない、という事が妙に心をざわざわさせた。 泣きそうになりながら、ふらふら歩いていると、4、5歳の子供が2人、三輪車に乗って空き地で遊んでいた。見なれない東洋人の私を見て、人なつっこく寄って来て「どこから来たの?」と聞いてきた。 「大学から歩いて来たの。『大学』知ってる?」と聞くと、2人とも顔に「!」マークいっぱいの顔をして目を輝かせた。そして、バスのアナウンスの「大学〜。大学〜。」という変な節を真似してはしゃぎあっている。そして、なんと20歳の私を大学の見える所まで、この紳士的なおちびちゃん達は三輪車で案内してくれた。ファーストネームを交換し合った後、ルフトハンザに乗ってドイツに来た話や、海の向こうの向こうのずうっと向こうの「ヤーパン(日本)」の事、そんな事を話した。彼らが思い付く限りの「遠く」と「ヤーパン」どちらが遠いか、真剣に比べあったのがおかしかった。いつか彼らがこの団地を巣立つ時に、迷子の日本人留学生の事を思い出したりするだろうか?あの団地の恐さに竦んでいた私を救ってくれた2人の天使の事を一生忘れない。 団地の恐さを思う時、あの子達の事を思い出すのが私のおまじないだ。  |