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| 恩師の手紙 2002年04月12日(金) | 10代の頃。多くの若者がそうであるのと同じように人生に倦んでいた時期があった。心底生きているのが面倒で仕方なかったし、1日1日はとても信じられないくらいに長く感じられた。ちょうど、そういうニヒリズムっぽい事に憧れる時期だったのかもしれない。そういう行き詰まっていた時期に、ある人に出会った。それはM先生という札幌に年2回だけ講師として、代ゼミで現代文の授業をしてくださる先生だった。現役生の私が、どうして得意科目だったその授業を受けていたのか今となっては思い出せない。でも、私にとっては、先生のヒューマニズムに触れ、生きるという事や死という事、そういう人間としての在り方を投げかけてくれたオトナだった。受験の事も、勉強の事も、本当にちっちゃい事だと思わせた。 「蕩児の帰郷」という聖書のエピソードを題材にした授業を受けた時、その放蕩息子が自分に重なり、ものすごい衝撃を受けた。そして、その時の気持ちの揺れとか自分の抱えている問題を、先生に打ち明ける手紙を書いたのだった。 それを宿泊先のホテルで読んでくださった先生は、あなたの手紙に息を呑み、気がついたらペンを握りしめ返事を書いていた・・・と笑いながら分厚いお手紙を渡してくださった。その手紙の内容は、私の問題を受容し、一緒に苦しみ、でも確実に良い方向へと導き、示唆してくださるものだった。理系を志していた私だったが、この気づきの芽生えを、私はきちんと深めて、向き合わないとダメになる気がした。「哲学」という学問がある事も、先生に教えていただいた。 先日実家に帰った時に、その恩師の手紙を持ち帰った。久しぶりに読み返して、今の自分がある事を、今まで通ってきた道すべて彼の影響であった事をつくづく思い、また先生に会いたいと切実に思った。 先生は、実は私を2度救ってくださった命の恩人でもある。まだお元気だろうか。出会ってから10年・・・。今なら、笑って胸を張って先生にお目にかかれる人間になれたと思う。 |