昨晩、突然知人から連絡があり、夕飯に招待された。 そのお宅では、私たちの世代よりはるかに若いお兄さんが、台所で包丁を握ってなにやら手際よく食材と格闘していた。私たちを驚かそうとしてか、いろいろ質問しても、なかなか素性を明かさない。 テーブルには、えびしんじょう、牛たたきサラダ、雑炊、焼き豚ほか、彩りよく並び、この料理に合わせた最高のおもてなしワインが添えられた。 「うっわ、おいしいわー、これ!」の連発であった。 なんか、すごいよ、すごい! おいしーい! で、そのお兄さん、なんとマレーシアの有名ホテルのシェフだそうだ。 はぁ、妙に納得。確かにどれもこれも普通の人には出せない味だったよ。 ワルシャワの某Hホテルに、近々オープンする日本レストランに「和の味」を伝授しに、はるばる南国から極寒の地に2ヶ月間出張にいらしていたそうだ。そして、それがワルシャワ滞在最後の晩であった。 私の知人とはどういう繋がりかというと、四日前に、ちょっとした所用で出会っただけの、何の利害関係もない間柄。普通だったら、何事もなかったようにそのまま忘れ去られてしまう出会いかもしれないけど、その出会いには何か運命的なものを感じると思ったようで、最後の晩に自宅に招待したようだ。そこで彼は、では、お礼に何か作りましょう、ということに。そんなプロの味は自分たちだけで頂くのはもったいな過ぎると思った知人は、即、私たちにも声をかけてくれたのだった。
なんだか、すごく不思議な繋がりなんだけど、私たちにとってもおもしろい出会いだったような気がする。もしかして、次の赴任国はアジア圏で、彼のレストランで食事をすることがあるかもしれないし、単に旅行者として訪ねていくかもしれない。 昨晩の出会いがなければ、今後の人生に何にももたらすものが無かったであろう。
楽しい晩であった。 知人夫妻の「もてなしの心」にも見習うべきものがたくさんある。 彼らほど「一期一会」を大切にする人をいまだかつて見たことが無い。
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