2003年03月27日(木) |
「戦場のピアニスト」をもう一度 |
A.ブロディがアカデミー賞の主演男優賞を受賞したことで、こちらでまた話題になり始めた「戦場のピアニスト」。 ポーランドではもう終日上演していないけど、一日に一回ぐらいならメジャーな映画館で観ることができる。 友達がまだ観ていなかったそうなので、一緒に観にいってきた。
いろんなところで話題になっていることだけど、映画の中でユダヤ人同士が英語で話をしているのが不自然だった。 アメリカ映画だから翻訳の関係で仕方が無いのかもしれないけど、これは手記をもとにしたノンフィクションのはずだ。ドイツ人兵士との会話はドイツ語そのままなのに、ユダヤ人が英語で会話をするのは全くうそ臭く感じた。ユダヤ系のポーランド人でポーランドでの出来事なのだから。 ポーランド語で話したほうが明らかに効果的なシーンがいくつもあった。ポーランド出身の監督、ロマン・ポランスキーはさぞもどかしかったことであろう。
1944年8月1日 ワルシャワ蜂起 ドイツ占領下で苦しむポーランド青年たちが蜂起しドイツ軍に立ち向かった。それを封じ込むため、ドイツ軍はワルシャワの街をしらみつぶしに破壊していった。ラスト近くで、爆撃の中をシュピールマンが命からがら逃げ回っていたのは、そのときのことである。 こうして当時のワルシャワの街が壊滅されていったんだ・・・と思った。 ここに住み始めていつも耳にする言葉。 「この街は第二次世界大戦でドイツ軍に破壊されて、戦後何年もかけて復元されました」 この映画を観て、その言葉の深みがわかった。
現在のワルシャワの街は中世の佇まいを忠実に復元している。しかし、どこもかしこも妙に新しすぎる。風化もしていない色鮮やかなレンガ一つ一つからは歴史は感じられない。歴史を持ったレンガは廃墟に消えたのだ。
この街の新しさが痛々しい。
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ドイツは自国の戦争責任を認め、ポーランドに対して戦後補償もしてきたし、自国民には「命の尊さ」を説き続けてきた。 世界のどこかで戦争がおこるたびに、マスメディアの捉え方が日本よりもはるかに真摯である。戦争の恐ろしさと残酷さを十二分に理解している国ゆえに、破壊と流血の痛々しさを目の当たりにし、誰もが痛切に和平を願う。 長年のドイツ生活で、私が肌で感じたドイツという国の印象である。
今回のイラク戦争で、米英に対し明確に戦争反対を唱えたドイツは評価に値する。何でもかんでもアメリカの言いなりの日本国が、在外の日本人として何だかとってももどかしい。
私はここに住む、日本語を理解する無国籍人でありたいと切に願う。
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