2011年06月07日(火) 膨張熱556。 |
22:30勤務終了。激務でささくれ立った気分を収めようと部下と職場近くの居酒屋に寄って酒を飲んで帰宅しようとした午前0時過ぎ。自転車の鍵を差し込んでも油が切れていてロックした状態から回らない。以前から油が切れていていつかは防錆潤滑油を差さなければならないと思っていたが、まさかこんな日に。といってもこのままではいつかは鍵が回らない日が訪れていて、どの日であっても「まさかこんな日に」なんて考える人間の浅はかさに打ちひしがれつつ、防錆潤滑油クレ556を手に入れなければならぬ。「え? クレゴーゴーマルですよね?」いやクレゴーゴーロクだって。「550ですって」556だっつのと、不毛な争いをしながら最寄のコンビニ2件まわったが売っていない。 「こうなったらサラダ油でも買うか。2、3滴垂らせばなんとかなるだろう」と、もう0時を過ぎてほろ酔いでくたくたなので自棄になって日清キャノーラ油に手を伸ばしたが、部下が「キャノーラはよしたほうがいいです」と、キャノーラの何を知っているのかわからんが強く制止されたため仕方がない交番に行こうと、近くの交番に行き「自転車の鍵が回らなくなったのでクレゴーゴーのあれみたいな潤滑油ってありますか」と、クレ556、550対決が終止符を打たないまま交番に入ったものだから曖昧な事を言って防錆潤滑油を求める。 「いやー、うちは確かに何でも屋みたいなものだけどさすがに油は置いてないよね。コンビニは? なかったの? そっか。じゃあドンキだね。ドンキだったら何でも売ってるよね。自転車の車輪持ち上げてさ、ドンキ行けばいいと思うよ。まあ絶対怪しがられて僕らが巡回中に声を掛けるかもしれないけどね」 と、悪い男が交番に忍び込んでお巡りさんを気絶させてお巡りさんの制服を着てバレないようにお巡りさんっぽいこと言っているかのような好い加減なアドバイス。本当に困っているのに私達がほろ酔いであることをいいことに、何だか終始ヘラヘラしていてここにいても希望の光は見えてこない。礼を述べるのも憚られたがありがとうございましたなんて言って交番を出て、とりあえず自転車のところへ帰ろうとしばらく無言でトボトボ歩いていたところ、突然部下が「アッタメレバイーンダ!」と叫んで驚いた。 自転車のワイヤーロックの差し込み口を温めればボーチョーネツというもので鍵が回るかもしれないと言い出す部下は結構いい大学を出ているのだが、コンビニも交番も駄目で八方塞がりな現状、仕事で八方塞がりになっても助けてもらったことは一度もなく、まあ無理だと思うが試してみればよかろうと、何をするのかと思いきやワイヤーロックの差し込み口を「ウオォォォ!」と、鬼神の如く両手でこすり始めてヤバイ。こんな大声ではすげぇ通行人が見てて恥ずかしいし深夜0時過ぎ。派手な自転車泥棒とも見て取れなくもない。このままでは再びあの交番に連行されて振り出しに戻るかもしれない。それでも部下は「ウオォォォ!」と鬼神をやめない。 そろそろ本気で他人の振りでも始めようかなと思い始めた数分後、「ウォッシャァァア!」と雄叫びと共にまさかの開錠。「マジでボーチョーネツすごいっチョネツよネ!!」と、興奮しすぎて少し莫迦になっている部下に礼を述べる。「これそのボーチョーネツっていうか執念だよね」と言うと、「僕は精神論は嫌いです」と思いっきり気合を入れていた部下は息を切らせてそう言った。 |
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