Spilt Pieces |
2002年05月17日(金) 些細な事か |
今朝、通勤ラッシュで混雑した道を車で急いだ。 自転車横断帯に、渡ろうとして立ち止まっている一人のおじいさんの姿を確認した。 サイクリングコースの一部であるその道には、信号機はない。 車が次から次へと走っていくため、短いその道を渡れずにいるようだった。 私も時間に遅れそうで急いではいたのだが、今自分が一瞬止まればおじいさんはこの後しばらく待たなくてもいいと思い、一旦停止した。 おじいさんは、不思議そうな顔をしてこちらを見ていた。 少し止まっただけのはずが、いつの間にか後ろには列ができていた。 私の気まぐれのせいで他の人に迷惑をかけても申し訳ないから、おじいさんに渡るようにと手で合図を送った。 おじいさんは、いやいやあなたがどうぞ、と、手で合図を返してきた。 困った。 進んでいいものか。 結局、私はおじいさんが動こうとしないので車のアクセルに足をかけた。 ちょうどそのとき、やっとおじいさんがお辞儀をして渡り始めようとしたところだった。 足は、アクセルを踏んでしまっていたから、突然ブレーキをかけたら後ろの車が怒るだろうと、言い訳がましいことを考えながら、おじいさんのお辞儀が見えていたにも関わらずアクセルを強く踏み込んでしまった。 あのおじいさんは、一体いつ頃渡れたのだろうか。 些細なことなのかもしれない。 自転車がお互いによけようとしてぶつかりかける、そういうよく見られる光景と似たようなものなのかもしれない。 それなのに、何だか気になった。 自分がとても嫌な人間のように思えた。 中途半端なことをしても、人を傷つけるだけだ。 おじいさんは、私におちょくられたと思っているかもしれない。 後になれば、何をすればいいのかが分かるのに、そう、私はおじいさんが手を出したときにもう一度、どうぞと伝えるべきだったのだ。 些細なことであっても、日常における自分の姿勢というものは、ふと出る気がする。 近頃中途半端で何をしたいのかもよく分からない自分のことを、戒められたような気がした。 そして同時に、おじいさんの不思議そうな顔が引っかかった。 道を譲られるということは、珍しいことなのか。 何となく、悲しくなった。 |
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