Spilt Pieces
2002年05月31日(金)  死と日常・2
先週の木曜に、飛び降りがあった。
そのことについて、先輩がサークルの掲示板に書いていた。
「あの事件、みんな知っていると思うけど。
あげつらって話さないでね。
手を合わせてあげて」


先輩は、その人の友達だったのだという。
きっと、いや、確実に苦しんだであろう。
だが、書かれていたのは他の話題のついでの静かな一言だけだった。


私がもしもその先輩の立場だったなら。
何ができるだろう。
何も、思いつかない。
いくら泣いても、悲しんでも、事実は変わらないし変えられない。
死という領域に、踏み込める人など誰もいない。
できることなど何があろう。


認めたくなかったこと。
私は、毎朝祖母に線香をあげてから学校へ行く。
それはただの自己満足なのではないか。
だが仮にそうだとしても、私は自分がそうしたいからそうする。
多くの人が、何かを乗り越えて生きているのか、それとも重力に負けて床に突っ伏しているのか。


天気がよかった昨日、キャンパスは多くの人で賑わっていた。
先週の木曜も、同じように天気がよかった。
先週の木曜も、喉の痛みと寝不足で私はぼんやり歩いていた。
「若いね」半袖姿の友人を茶化した。
「もうすぐ夏だよね」


季節は、移りゆく。
もう誰も、先週の話などしない。
いつものように、みながその場を通っていく。
そんなときに見つけた掲示板の書き込み。
胸の痛みが、消えない。


人は、忘れることができるから生きていられるのだと以前聞いた。
ずっと同じだけの痛みを抱えたまま、私は生きていく自信はない。
痛みは色褪せていく。
しかし。


「たとえば僕が死んだら…」というフレーズが、昔のドラマの歌にあった。
私は、忘れられたいのか、忘れられたくないのか。
その前に、私が生きている理由は何だろう。
痛い、もう考えたくないと、過去に何度となく放棄し逃げてきた自問自答。
否。
答えられたことなど一度もないし、これからもないのではないか。
続く自問。
Will / Menu / Past : Home / Mail