Spilt Pieces
2002年08月01日(木)  富士山
富士山に登った。
朝九時に駅集合。
レンタカーを借りた友達が迎えに来てくれた。
わいわいやりながら山梨県のビジターセンターに寄り、五合目へ。
駐車場で仮眠を取って、午後九時に五合目を出発して山頂へと向かった。


星のきれいな夜だった。
天気もよく、風も涼しく吹いていた。
星に抱かれているような気がした。
そんなことを言って友達に引かれてしまうのが怖かったから、空を見上げていただけだったけど。
登るにつれて空が近づいてくる。
流れ星を七回も見た。


気持ちよく登っていたのも束の間、私は突然の腹痛にしばしば休みを取ってもらった。
友達の「頑張れ」が少し心に痛かった。
体調の悪い人が多く出た。
高山病の症状が出てしまった人もいた。
何度も戻してしまっていた。
私は楽な方だったと思うから、その分自分が根性なしに思えて辛かった。
ただ、みんな何度も立ち止まりながら、日の出には間に合わなかったけれど、何とか自分の足で山頂に辿り着けた。
そのことが嬉しかった。
たくさんの荷物や水を持って文句一つ言わなかったワンゲルの友達に感謝しつつ。


ご来光は、九合目で見た。
頂上は見えていた。
疲れていた私たちは、まだ空の片隅で月が佇む朝の光の中で、少し眠った。
富士山は、話に聞いていた通り、ただ登るだけで他には何もない山だった。
だけど、あの光景にはひたすら感動しかなかった。
雲を足の下に、光出瞬間をただ見ていた。
空が、朝の訪れを告げていた。
毎日というのは、こういうことの繰り返しの中にあるものなのだと知った。


祖父母の写真を持って私は写真をとってもらった。
もう山に来ることのできない祖母、年齢的に難しいと思われる祖父、私は、二人の分も笑った。
友達には少し変な顔をされた。
それでもいい、私はただ、祖父母と一緒に写真をとりたかった。
山頂で、祖父に長寿のお守りを買った。
私は、山の神様に、祖母の成仏と祖父の健康を祈った。


友達が、具合の悪くなった彼氏の面倒をみていた。
愛情というのはすごいねと、別の友達とひやかしながら。
羨ましかった。
私にはない感情を持っている人。


空が近かった。
岩を登って息を切らして、気分が悪くなって、得たものは空が近いという感覚だった。
そして、いくら近くても届かないことも知ったのだった。
雲に乗れると思っていたのは、一体何年前のことだったろうと、雲の中を歩きながら少し寂しさを覚えた。
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