違った時代に生きている3人の女性のたった一日に人生のすべてが盛り込まれている。 ヴァージニア・ウルフの小説「ダロウェイ夫人」に魅入られた3人の女性。 ウルフ本人、名前がクラリッサだから、友人に「ミセス・ダロウェイ」と呼ばれる女性、そして「理想の妻」像を生きながらそれに耐えられなくなってしまっている妊婦。 その3人が、一本の糸で結ばれている。 はじめから、衝撃的な入水シーン。 ウルフの遺体は冷たい水中で藻に絡まって沈んでいたそうだけど、流れる水の中に戸惑うことなく入り込んでいくウルフの美しさに初めにはっとさせられる。 次々にフラッシュのように違った時代が重ねられていく。 レナードへの置手紙。 「一番良い方法を選びます」この上なく優しい夫あってこそ作品を生み出せたというウルフ。これ以上生きていくことは、狂気を増大させるだけ。 死んでいくしかなかったのでしょう。 クラリッサの一見強い生き方もすばらしいのだけど、私には妊婦のローラが一番心に残った。 息子との間にある、なにかしら隔たりのようなもの。それを敏感に感じ取っている息子、息子役の少年の目のなんと美しいこと。 ローラにはすばらしい理想的な妻として生きることは苦痛でしかなかったのでしょうか。死を覚悟してホテルに入ったのに、死ぬことはできなかった。 そして、子供が生まれた後、夫と子供を捨てる道を選ぶのです。 でも、彼女の選んだ道は決して幸せではなかったと思う・・・ 詩人が死んだ後、ローラが尋ねてきて、クラリッサの娘と抱き合う。 その姿に初めてほっと救われたように感じたのは、私だけではないと思うのですが。 同性愛というのが底辺にあって内容的にかなり難解だと思う映画だけど、映像と音楽の美しさ、3人の表情、イギリスの田舎の美しさなどが見ることを飽きさせなかった。
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