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まったく思いもかけなかった方からのお誘いで博多座で「新・近松心中物語」をみることが出来た。 まずオープニングにびっくりする。 そこは遊郭の中身そのまま。男と女そのままが広い舞台いっぱいに繰り広げられ、ひとつずつスポットが当てられる。 あっと息を呑むところをおいらん道中がゆっくりと進んでいくのだ。 忠兵衛と梅川が出合うシーンは一瞬凍りついたような緊張感が走り、そこから理性も道理もすべてかなぐり捨てて愛だけに走る男と女が現れる。 私にとって「隣のハイムさん」だった、幸せを貯金しに来る阿部寛は、そこになくかみそりのように削げあがった忠兵衛がいた。 大金をぽんと投げ出して身請けするシーン、それを身体中で喜びを表現する梅川そこからがクライマックスだった。 田辺誠一(与兵衛) お亀(須藤理彩)のカップルが3の線だけどとっても良かった。どう見ても頼りない、どうしようもない婿をこころからいとおしく思っているお亀の、はっきりとしゃべる言葉のなんとすがすがしいこと。 あの、2枚目路線の田辺誠一が、下帯一枚で何度も何度も魚のように水の中に、飛び込むシーンは「こんなに細い身体を毎回痛めつけるなんてなんてかわいそう、もう止めて」なんて、余計なことを思いながらもつい、おかしさで笑いが出てしまう。 最後の彼の台詞、「寿命が来るまで生かせておくれ〜」が、とてもよかった。 クライマックスの心中シーン。 会場全体に雪が降りしきる。 客の頭にも紙ふぶきの雪が次々に降りしきる。 なんてきれいで、透明に透き通っていて、汚れたものなど何もない。 梅川は遊女、忠兵衛は、御用金に手をつけたおとがめ者。 けど、そこにあるのはそれらすべてを覆いつくし真っ白に降り積もった雪、ただ愛だけに生きた二人の姿。 心中を遂げることで幸せをつかむことしか出来ない二人。 白い雪の中の真っ赤な衣装。首を絞めるシーンのなんと凄絶なこと。 もっと近くでしっかり顔を見れたらどんなに良かったかとふと思う私。 音楽のすばらしさ、セットの美しさ、森山良子さんの歌声のすばらしさ、すっかり感動に浸ってしまった。 Sさま。私ごときにこんなすばらしい機会を与えてくださったこと本当に感謝いたします。
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