パラダイムチェンジ

2006年01月06日(金) ロードオブウォー

今回は映画ネタ。見てきたのは「ロードオブウォー」
この映画を一言でいうと、「悲しいけどこれが現実なのよね」である。

この映画、実際の話をベースにした作品らしく、ニコラス・ケイジ演じる
武器商人が、ソ連崩壊に基づく冷戦の終了と、その後世界各地で頻発した
内戦の陰で、暗躍するさまを描いた作品である。
セックスとコカインと火薬。
なんて書くと男根主義的なプレイボーイ誌っぽいというか、落合信彦
っぽいというか(読んだことないんだけど)。

一本の映画としては、ニコラス・ケイジの作品に大外れなし、という私の
持論に今回の映画もあてはまっていて、構成というか脚本がしっかりした
映画だと思う。

題材として、もっと陰惨でやりきれない内容になったり、お涙頂戴の映画
になってもおかしくないのに、ニコラス・ケイジのモノローグと併せて、
物語は淡々と、そして時としてユーモラスに進んでいく。
とりわけ、ニコラス・ケイジを追いかける捜査官との攻防は、まるで
ルパン三世の世界の様でもある。

もう一つ、この映画を見ていて上手いな、と思うのは、主人公に対比する
人物として、当初一緒に仕事をするイケメンの弟をおいた事だろう。
彼は、自分が扱っている商品、銃によって人の命が失われていく、という
良心の呵責にさいなまれて、やがてコカインに依存していってしまう。

その兄弟の会話の内容が、この映画を端的に表わしていると思う。
うろ覚えながらここに書いてみると、ニコラスケイジが、自分の妻に
自分の仕事の内容を話していないことに対して、弟はすごいな、と
つぶやく。
それに対してニコラス・ケイジはこういう。

「お前は銃が人の命を奪うというが、車だって飛行機だって人の命を奪う
事もある。車のセールスマンが、そのことを家庭で話すか?それに銃より
も、もっと沢山の人間が車で死んでいるんだ」

また、図らずも虐殺の現場を見てしまい、止めようとした弟に対しては、
こう言い放つ。
「関わるな」

これらは詭弁である。でも、そこで割り切れるのかどうかで、兄と弟の
生き方は分かれていく。弟はドラッグにのめり込み、兄は黒いビジネスに
のめり込んでいく。

妻に武器の闇取引の事を感づかれてしまい、その妻から「その仕事を
やめて」と言われたニコラス・ケイジはやめられないんだ、と言った後
こうつぶやく。
"I'm good at."(字幕では、「才能があるんだ」)

ニコラス・ケイジ演じるユーリが、セックスにもドラッグにも溺れず、
またアフリカや各地で、狂気の沙汰の中でも正気をたもっていられた
のは、彼がビジネスでの成功という、麻薬にとりつかれていたからなの
かもしれない。

そしてこの映画を見ていて、実はホリエモンやムラカミファンドの事を
思ったのである。
案外彼らも、自分の事を"good at"だと思いながら生きているんじゃない
のかな。

物語には最後、一つ大きなどんでん返し?がある。
それは映画を見て確認してほしいなあ、と思う。

この映画は武器商人、死の商人という、闇の世界を描いた作品なんだけど
事実を基にしたことで、その内容の説得力とともに、本当の悪人というか
闇の世界というのも、実はサバサバというか淡々としたものなのかもしれ
ないな、と思わせる映画だった。

そしてその現状を皮肉たっぷりに、エンターテイメントとして成立させた
スタッフに敬意を表したいと思う。

彼ら武器商人が大量にばら撒いた弾薬によって(それこそ本当に「大量」
破壊兵器である)、アフリカで起きた事を逆の立場で描いた、「ホテル
ルワンダ」を見るときの参考にもなるかもしれない。
結構オススメである。


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harry [MAIL] [HOMEPAGE]

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