蛇腹食堂
書人*なび太

   

  




忘れていた音
2003年01月15日(水)
その駅は山と山に挟まれた谷間にある小さな駅で、
周りはわりと木々の多い場所なんです。
毎朝、電車はその寒々しい駅舎の前で、
ドアを開け放ったまま数分間停車します。

いつもなら、
「さみーな、おい。さっさと閉めてくれよ」
ぐらいのことしか考えないんですが、
今日はまだ熱がさがりきってなかったせいか、
本当に頭がぼぉーっとしてまして。
無思考状態とでもいいましょうか。

不意にホームを冷たい突風が渡っていきました。
その時、ぼんやりと思考の滞っていた頭に、
その音は自然と響いてきたんです。



多くの葉っぱが風に揺さぶられ、
互いにかすれあう音。
木々のざわめき、って言うんですかね。
それは思いがけないほど大きな音でした。
ザワザワザワザァーって。
文字では上手く表せないんですが。



子供の頃は、
いつも小学校の裏山で聞いてた音。
物凄く身近にあって、
意識もしてなかったのに、
なぜか耳にしっかり残っていた音。

それが歳を重ね、
「世事」という厄介な物とも、
否応なし触れ合わなくてはならなくなるにつれ、
いつの間にやら遠のいて、
ついには意識もしなくなった音。

そんな音が、
自分の周りには意外と沢山あるんだろうなぁ。
それって実は結構不幸な事であり、
それにふと気付けた今日は、
ちょっとしたいい一日なんではないかなぁ。

と、いうようなことを、
ぼーんやり考えていると、
いきなり目の前でドアがピシャリと閉まり、
電車はいつものように駅を離れていきました。



===============================================
*お詫び*
昨日の日記で、
一部に配慮にかける記述がありました。
お詫び申し上げますと共に、
内容を一部削除させていただきました。
当ホームページ「蛇腹庵」と日記「人面人」を
今後とも温かく見守って頂けますと幸いです。

管理人 なび太

===============================================




My追加



設計*しゑ(繊細恋愛詩)
感謝→HP WAZA !
素材著作権且感謝→M3