久しぶりに立っているだけで大変な風に吹かれた。雨が小降りになっていたのが幸い。まだ新しい傘を壊さずにすんだ。 家に辿りつくと、庭の鉢植えやプランターがすでに転がっていた。一番驚いたのが菖蒲の苗、平たい箱なのにまるまる100株が逆さに倒れてダメになってしまっていた。すでに家族も直すのを諦めたようで、放置してあったのだった。 台所の窓から見える無花果は右へ左へと枝をしならせ、いったい風向きってどっちなんだろうと、見ていて不思議だ。日除けのすだれがないのは、いつのまにか風に飛んで行ってしまったからだという…。 夜に窓を叩く枝というのは結構怖い。先についた葉が掌のようで、まるで、入れて〜入れて〜と言っている怪談を思い起こす。 家は坂の上に建っているので、浸水の心配はなかったが、木造なので吹きつける雨が隙間から入りこんでくる。しかし、何より騒がしい。雨戸を叩く音、ガラス窓が揺れる音、そして、障子のはためく音。いや、本当にぱたぱた〜って、ここは室内?と思わず突っ込みたくなる音が…。これはもう、笑うしかない。 それでも、今回の台風はスピードがあったので、夜は静かに眠ることができた。 朝、駅までの坂の斜面に茶色の物体が視界に入った。確か家のすだれってあんな大きさ?と思ったものの、時速50km(しかも朝!)では振り返る余裕もなく、未確認のままである。
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