夏休み 今日は童心に返っていただこうかと ものがたりを 載せてみようと考えました 言葉は大人向けですが 内要は子供向けといった感じです
木いちごの季節に作ったものです 森の中で 黄色いいちごを頬張って こんなおはなしができました
七つの木いちご
いくつもの山といくつもの谷を行ったところ
ふかいふかい森のなか すこし空気がちがう場所があります 人間の目には映らないものもたくさんいます そこは妖精たちが隠れるためだけではなく 不思議と人の目には見えにくくなっていました
芽生えの春をすこし過ぎたころ お日様は雲に隠される事が多くなります お日様を感じることができなくなった空気の精たちは 寂しくなると 涙を流し 雨を降らせていました
今朝も森の中では 妖精たちが目を覚まします
「今日も雨か・・・」
フワフワの苔のベットに起き上がり 腰掛けながら 妖精のミリーが目を覚まします
「今日はクルミの葉の傘をさして、すこし遠くへ行こうかな」
そんな気持ちの朝でした
ミリーの寝床から だいぶ離れたところに 生き物達も通らない 静かな場所がありました そこに木いちごがひっそりと実をつけて じっと動かずにいました
細い細い枝に つやつやとした黄色の実が七つ すこし重そうに実っています 一つ一つには 小さな粒が きれいな丸を作ろうと お互いがにぎゅっとくっつきあっています
「1.2.3.4・・・ 5.6.7・・・ 7つの実 きれいでしょ? とても甘いのよ 大切に実らせたの すてきでしょ?」 木いちごは嬉しくてたまりません でも 食べたいといってくれるものも 美しい実に目を奪われるものもいません 「今年も このまま土に返すのかしら・・・」 木いちごは食べてもらったり喜ばれたことがありませんでした
さわさわさわ・・・・さわさわ・・・・ 何か近づく音がします 「何?」 今まで聞いたことの無い音に 木いちごはドキドキします さわさわさわ・・・わずかに何かのすれあう音です ミリーでした
「あっ」
ミリーの目はすぐに木いちごを見つけました 「木いちご・・・?なの?・・・」 木いちごは言葉を失って フルフルっと揺れて見せるだけでした 実を落とさないように そうっと・・・
「こんな所で・・・・誰かのために実っているの? 誰かのための 特別なの?」 ミリーがゆっくりと尋ねます 「いいえ・・・・そうじゃないの ここにずっとひとりでいるの」 「こんなに立派で こんなに美しく輝く実をつけているのに?」 「え?・・・・わたしが?・・・」 「そうだよ 木いちごなら僕のベットの近くにもたくさんあるよ でも・・・こんなのはじめて見たよ すごい」 ミリーが知っている木いちごよりもはるかに大きく 粒もそろって 黄色の色も濃いのです
ミリーはしばらく眺めてから思いつきました
「あ・・ねえ・・・木いちごさん お願いがある 二つ大杉を越えたところに りすのヤーじいさんがいるの 足をくじいてしまって 動けずにいるんだ 1つ 実を届けてもいいかな?」
木いちごは戸惑いました 「私を・・・・・ 届ける?」 どこかで誰かが食べてくれる そんなことができるのかとドキドキします 「やってみたい・・・・ええ! ぜひ持っていって あっ・・・・ひとつお願い・・・・ 私の大切な実を食べたときの様子をちゃんと私に伝えてね」 「うん 約束する きっとよろこぶよ ありがとう」 ミリーはほかの実まで落としてしまわないように 枝を揺らさないでそっとそっと1つ取りました 「いってくる」 ミリーは笑顔で戻ってきました 木いちごにヤーじいさんの話を聞かせました 木いちごもミリーも大喜びです 「ねぇ 木いちごさん もりの一番下の谷に 木ねずみがいるんだ たくさん赤ちゃんが生まれてね 木ねずみ母さんが 食べ物をさがすのに大変なんだ 1つ 持っていってもいいかな」 「ええ!もちろん 子供たちの様子を聞かせてね」 こうして1つ、また1つと 木いちごの実はミリーに運ばれていきました 羽根を痛めたふくろうのおばさん ひとりぼっちで寂しがっていた野ぎつね 罠にかかって命からがらこの森に逃げてきたたぬき 蛇が心配で卵から離れられないコジュケイ みんなとても喜びました その様子を丁寧に木いちごに話すミリー ミリーも木いちごの喜ぶ様子を見て うれしく思いました
最後の1つ 誰に運ぼうかとミリーが考えていると 木いちごが言いました 「最後の1つ ミリーが食べて ミリーはみんなをたくさん幸せにしたのよ こんどはミリーに 喜んで欲しいの あなたの喜ぶ顔がみたいもの」 「僕が?でも 木いちごを必要としている誰かが まだいるかもしれないよ」
そのとき後ろから 年をとった小さな山ねずみが近づいてきました どうしてこんな所に・・・? きっと迷ってしまったのでしょう 見るからに弱っていて 息も辛そうです 「やまねずみさん・・・・何かあったの?大丈夫なの?」 ビリーは不安な気持ちで尋ねました 山ねずみはゆっくりと 声をかけてくれたほうへ 顔を動かしました 「・・・・年を・・・・とりすぎてしまったんだ・・・・・・ 目も鼻も・・・・・役に立たなくなってしまったんだよ・・・ そろそろ・・・・・・土に・・・ 返るころだと・・・思うんだが・・・・・」
・・・・・ミリーは木いちごを見ました 最後の1つ 山ねずみさんに食べてもらおう
ミリーは慎重に最後の1つをとると 山ねずみに差し出しました 「さぁ これを食べて 元気をおだしよ まだまだがんばれる」 山ねずみは驚きました このまま食べ物も見つけられず 土に返ると思っていたから・・・ 「・・・・・私はいいのだよ・・・・・ これから生きるものがお食べ・・・・」 「山ねずみさん あなたがこれを食べて おいしく思い 心の中に小さな喜びが生まれたら 僕は何よりもうれしいんだよ さぁ どうぞ」 山ねずみは驚きました 今まで自分は誰かの餌になるのではと ビクビクして生きてきたのです 食べ物をさがすのも あたりを確かめながら やっとこけももが1つ・・・ そんな日々でした
・・・こんなに年をとって 今にも・・・・
それなのに 食べ物を与えてくれると言うものがいる しかもこんなに立派な木いちごを
山ねずみは木いちごの一粒を口に入れました 「なんて・・・なんて素敵な・・・・味なんだろう」 木いちごの甘さだけではありませんでした 心から感じる嬉しさも加わっていたからです
「ありがとう・・・ありがとう・・・こんなに幸せな気持ちは初めてだ 土に返ることが・・・・寂しくなくなったよ・・・・ありがとう」
まるでこの時を待っていたかのように 山ねずみの息は静かに消えてしまいました ミリーも木いちごも驚きました いままでみんな 元気になったのに 幸せになったのに はじめて・・・・消えてしまったからです
ミリーは山ねずみにそっと落ち葉をかけました 誰にも見つからないように・・・・・
ミリーは感じていました 木いちごを届けたみんなの喜びが 心の中に残っている事を ミリーの喜びになっていることを
「みんなの喜びは僕の心の中に残るんだね 僕が運んだ喜びもみんなの心に残るんだよね 木いちごさんの実はなくなってしまったけれど 木いちごさんの心にも残ったよね 七つの喜びが残ったよね・・・・・ 山ねずみさんも 木いちごさんの実も 目には見えなくなってしまうけれど ちゃんと心に残るんだよね ・・・・・木いちごさん なんだか心があったかいよ」
嬉しさをこめたミリーの声を聞きながら 実のなくなった木いちごは すこし疲れたように 「そうだね・・・・そうだね・・・・」とつぶやきながら ゆらゆらと揺れていました 来年また実をつけるために 永い眠りにつくのです
ミリーが頬に 木漏れ日のあたたかさを感じて ふと見上げてみると いつのまにか厚い雲が溶けて うっすらと青い空が見え始めていました
・・・・おしまい
上手く表現したり 言葉にしたりはできません こんなおはなしがあったらいいな・・・から 始まっています ・・・難しいものですね 私がからっぽだからでしょうか・・・ 勉強不足は・・・この際 棚にあげさせていただいて・・・
あなたの中のミリーは どんなミリーだったでしょう? 聞かせて欲しいです どんな森だったでしょう 連れて行って欲しいです りすは・・・?きねずみは・・・? 絵が無いということは 空想の中で自由に楽しめるということです 心の中で頭の中で 描くことができたとしたら それは心が解放されたと いえるのではないでしょうか・・・・
|