昨夜 思いがけず 自分だけの時間ができた いざ 自由にできるとなると どうしていいのかわからなくなる 夜だったし・・・・ とりあえず 暗闇の海でも見ようと 海岸線へ 車を走らせた
なぜかうしろめたいような もっと大胆になにかをしたいような 複雑な心を抱えて・・・
月が出ていなかった これは とても残念だったが 夜に魅せられて 帰れなくなるのも 困ると思った・・・帰らなくてもいいのに・・・ 自分の中で 自分なりの規則が出来上がってしまったらしい 自由を楽しめなくなってしまった自分に気付く つまらない人間だな・・・ もう羽目がはずせない
今は いつもできないことをしている そう思い込もう もっとワクワクして この時間を楽しもう おかしなもので 自由にできる時間がないと あれほど好きな事をしたいと思うのに これはいったい・・・どういうことだろう 心から 年をとったのだろうか・・・ 寂しい自分・・・
そう言う自分に 腹が立った 大好きな場所まで行こう そこに行けば 気も晴れるだろう 森を抜けて 岬がある 岬を降りると 岩海岸があって・・・
・・・こわい 森が怖くて進めない 鬱蒼と木が生い茂り 闇に飲まれてしまいそうだ ・・・進めない 暗闇が怖いと感じたのは いつ以来だろうか ・・・・馬鹿だな 私
そのまま岬の道をそれて 海岸線を回る道へ進んだ 昼間賑やかな 魚介料理の店 土産物屋 もう二度と店がひらかないかのように 暗く静まり返っている はじめて見た夜の港街
・・・海を見ることを忘れていた ふと視線を海に移す
あっ・・・漁船・・・
黄色い電球を 煌々とつけた漁船が一隻 100メートルほどの沖に 浮かんでいた その灯りが海に映り 私の元へとまっすぐに 道を作っていた
・・・・きれい
波が揺れると キラキラして 光の花が咲いたよう 黄金色だ
あんなに近くで 何がとれるのかな 車をとめて しばらくの間眺めていた 朝 魚河岸で競りにかけるのかな 夜からの仕事なんだ・・・ 暗黒の海で働く人たち・・・ 闇の海を 怖いと感じたことはないのだろうか 生きるためだもの そんな感情はわかないのかな・・・ 漁船の灯りが ばかに明るい あまりにも暗い周囲に その灯りを頼もしく感じた 静寂を破るのは 音だけでは無いんだ 不安を取り除いてくれた 灯りだった
自由になれた一時 特別なことはできなかったが 確かに心は解放できた・・・と思うことにして
沖釣りの 眩い灯り 闇に落ち 我が足招く 海を渡れと
暗黒の 海に浮かびし 釣り船が 波に咲かせた 黄金の華よ
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