三千の烏 2002年04月23日(火)
三千世界の 仏の掌の上に それは転がっている 目覚めたばかりの蛙の 青い皮膚に 詰め込まれた 命は数え切れぬ細胞の形で 増殖し分裂し死滅し 決して融合はせずに 生きる ただ生きる その集合が どうして何かを成し遂げる 生命になりうるのか 三千世界の そのたった一つの細胞に 私は目を覚まし 傍らの異界に いつか捨ててきた未来を 透かし見るのだ 手に触れるほどの 距離にあるもう一つの世界 決して行き着けぬ 遥かな場所は 現在と比べれば いつも鮮やかで 花のうちの 時間軸は停止している 目を覚ますはるか以前から 世界と生命は 同じ場所を同じ形で 廻りつづける 私の歩みは 何処へも行き着くことのない軌跡 蛙の皮膚が 花になることがないように 三千世界の 仏の掌の上に それは 転がっている |
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