note「烏」 2002年05月08日(水)
烏(からす)は三界を渡る、とはよく言われる。 しかしそれは人の立場から見た事実だということを、忘れてはならない。 どれほど努力しても、我々<人>には三界しか見渡すことが出来ない。 即ち、烏と三界の関係しか知りうる立場にないという事だ。 真実はこうである。 烏(からす)は、全ての界を旅する唯一の生命である。 これはもちろん、異なる言語体系の全てを体現し、界境を越える際に起こる位相変化に影響されない存在となった<目覚めた者>を除いて、だ。 烏(からす)は全ての界を旅する。 彼らはその漆黒の翼を用いて、論理的真空域を軽々と飛んでいく。 それは一重に、彼らが外界に拠らぬ自己確認を常に保持しているという事であり 、相対的善悪基準に惑わされていないという事である。 おおむね一つの世界に縛られる他の生命にとっては、理解しがたい異端の存在であり、神の使いと呼ばれまた悪魔の手先と罵られるのも仕方のないことであろう。 だが、我々は彼らに学ぶべきである。 彼らはどの界でも常に、あらゆる常識や社会的規範から自由である。 彼らは輝くものを好むが、それは彼らが本質を見抜く眼を持ちえているからである。 烏が好むものは自ら光を放つもの、あるいは他の光を受けて輝きを放つもの。そこに底通するのは輝くことに一心である存在の姿勢である。 もしも機会があれば、注意深く観察するが良い。 烏の集める魂の、その輝きの形を。 他力であれ自力であれ、自らの努力によってであれ環境に押される形であれ、輝こうとする魂には一つの共通点が存在するのだ。 烏に選ばれるような魂であれと、それは難しい要求であるかもしれない。 しかし、烏と同じく、現実と肉に覆われて見過ごしがちな魂の輝きを見出す眼を持つことは、そう難くない事だ。 注意深く、注意深く世界の動きと人の動きを観察したまえ。 |
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