あまおと、あまあし
あまおと、あまあし
 幻肢(夏の木立) 2002年05月25日(土)

ないはずの場所が痛む
<幻肢>と
夢ばかりを追う私の
幼い脳が生み出した
それは

(痛い)
四辻を過ぎて振り返る
初夏の木陰は目眩がするほど濃い

(痛い)
蝉たちの声に耳を占領される
鳴く為だけに生きる命

祈るために合わせる
歩くために繋ぐ
そんな手は
持ち合わせてはいないはずなのに
迷う
木陰の涼しさよりも
日差しの熱よりも
無いはずの手の
痛み


痛みが確かすぎて

忘れそうになる
足はきちんとあるのに

むこうの四辻のその先の
今は見えないその角まで

手などなくても
……なくても歩けるから




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 著者 : 和禾  Home : 雨渡宮  図案 : maybe