あまおと、あまあし
あまおと、あまあし
 2002年08月15日(木)


 灯火を幾つもぶら下げて
 送り出してさしあげるのですが
 どうしたことか
 狐火はくるくると廻っております
 向日葵の中心は
 今日も大きな口を開けておりますのに

 いつだって
 輝きの真中にある黒は
 奥にある空っぽを隠そうと
 磨き上げる手を待っております
 夏の巡るたびに
 冷たい水と花の香りとを手向けられ
 けれどそこは帰る場所などではなく
 扉を開けたところで
 小さな背中さえ見つけることはできません

 いっそ
 潔く全てを放り出して
 私の帰りたい場所は冬の荒野であると
 叫べばよろしいでしょう
 小さな扉を開けては閉めて
 招かれては拒絶され
 同じ場所をくるくる廻りつづけるなど
 ほんとうは喜びではないのだと
 あなたが一言おっしゃれば
 笑いますのに
 笑いますのに

 夏の終わることだけを告げ
 今日も狐火は迷うております


  

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 著者 : 和禾  Home : 雨渡宮  図案 : maybe