あまおと、あまあし
あまおと、あまあし
 雑感 2002年08月23日(金)

蚯蚓は。
僕のように1・5の視力を備えた目を持っているわけではない。
良く利く鼻を持っているわけでもない。
なにより、地面の底から空は遠すぎるはずなのに。
雨が降ることを予感して、自分の巣穴に蓋をする。

目を閉じて、光を瞼越しに感じながら。
雨、どこからやってくるのか。
僕は知ることが出来ない。

傍らにいつでも君が居て、電話をかければ話せる人もいて。
言葉を発さない日は一日だってないのに。
どうして突然、孤独な気持ちになるのだろう。
皮膚一枚隔てた場所にある、予測不可能な低気圧。
僕はびしょぬれだ。

庭は激しく繁茂する雑草に覆われて、猥雑な生命力に満ちている。
鎌を手にする気力さえ起こらない。
つま先で踏み潰せる生物に、負けている。いつだって。

いっそ蚯蚓ならば。
暗い土の底で君のことも知らず、太陽の形も知らず、雲の色も知らなければ。
食道を通過していく土と、自分を溺れさせる雨の事だけで身体が一杯ならば。





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 著者 : 和禾  Home : 雨渡宮  図案 : maybe