あまおと、あまあし
あまおと、あまあし
 告解 2002年09月11日(水)


父よ


私はあなたの喉に付きつけられた
一本の刃であります
晴天を煩わす灰色の狼煙であります
花園を枯らす一匹の蜂であります

 ◇  ◇  ◇  ◇

      花がそのあるがままで花であるなどと?

 ◇  ◇  ◇  ◇

私の家には庭がありました
けれど井戸は水を湛えず
ただ一本の花はしおれ
今にも枯れるばかりなのです

 ※   ※   ※   ※

      薔薇に必要なのは
      劣った蕾を切り落とす鋏と
      有害な虫を追い払う手と
      そして、何より

 ※   ※   ※   ※

水を乞うても
通りを過ぎる人々は見向きもせず
泉を探しに行けば
蜜のある川は全て他人のものなのでした
盗み出した水は手からこぼれ
私が得たのは石ばかりでした

空は青く
一点の曇りも無く

私は磨がれる刃になるしかなかったのです


 ◇  ◇  ◇  ◇

       きっと眼差しが
       花には必要なのだ
       誰も見つけることの無い高山の
       人に知られず獣にも知られず
       蜜を運ぶ虫さえも辿り着けぬ場所にあって
       何かが花弁を開いたとして
       それは花と呼べるのだろうか
       
       花の

 
 ◇  ◇  ◇  ◇

たった一本の花を枯らした私は
あなたのような農夫にはなれぬでしょう

私は
一本の刃であります
育てることの出来ぬ
刃であります

       
                    

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 著者 : 和禾  Home : 雨渡宮  図案 : maybe