あまおと、あまあし
あまおと、あまあし
 紅朽葉 黄朽葉 浅緋 山辺路に  2002年10月17日(木)


……君の背中を探しては惑う

† † † † † †

他人の存在を、いったい「普通」の人はどれくらいの年齢で認識するのか。
動物的な、生命体としてではなく、自分とは別個の精神を持つ存在として。
私が思うことは、貴方が思うことではない。
私が願うことは、貴方が願うことではない。
私の痛みが、貴方に届くことは無い。
そう気付くのに、ずいぶん長い時間を費やしてしまった。
いや、未だにわからない。繋がる方法、など。
届かない、解らない、痛みの疑似体験だけが積み重なってゆく。

けれど私は、放棄したりはしない。
歌は、書き記さずとも伝わり伝わり、この耳に届いた。
言葉は、形を変え、響きを変え、しかし失われること無くこの手にある。
黙って立ち止まることなど、決してできないのだから。
衝動が、あるかぎり。

†  †  †  †

棗は
決して林檎にはなれぬのだと
娘は出ていってしまった

私は一人
明るい庭に立って
摘み取られない記憶を数えている



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 著者 : 和禾  Home : 雨渡宮  図案 : maybe