レプリカントな日々。

2002年07月13日(土) 「グリーン・マーズ」キム・スタンリー・ロビンスン著 2001年創元SF文庫

 暑いです。
 カメラの返品交換&今まで使っていたパワーブックの売り飛ばしに行ってきました・・・。テスト撮影は日曜日にでも。
 何年も一緒に寝食を供にしたパワーブックちゃんとお別れするのは、なんだか身体の一部をもぎとられるようです。でも、体重が減らない所を見ると、身体の一部にはなりきってなかったんでしょう。

 エンピツは今は有料版しか無いそうで、それを申し込んだのをこってり忘れておりまして、お試し期間がとっくに過ぎていたせいか、書き込み出来なくなっておりました。先日お金を振り込んでの復帰です。


 この「グリーン・マーズ」は「レッド・マーズ」に次いでの第二段、三部作だそうです。
 いわゆる超大作ってやつですね。
 上下巻でやたら分厚いです。
 「2061年のカタストロフィーののち、火星社会は驚くべき復興を遂げていた。今や火星を支配する暫定統治機構は地球の企業体の化身であり、火星の緑化がもたらす、可能な限りの富を手に入れようとしている。秘密コロニーに潜んだ<最初の百人>の生き残り達は、これに対抗し火星の独立を目指してレジスタンス活動に出るが・・・」背表紙の要約。

 環境保護運動と国家独立運動を火星で繰り広げちゃってます。
 しかしまぁお話のリアルなこと。
 あの物語は「キャラがたっているねえ」等といいます。
 要するに・・・フィクションであるはずのその登場人物が「生きた人間」としてリアルに感じられるということですね。
 吉永小百合はトイレには行かないそうですけど、我々ふつーの人間は喜怒哀楽だけでなく、怨憎会苦だの不求得苦だの七つの大罪だのビフィズス菌だの、様々なドロドロを腹に抱えて生きている生身の哺乳類なわけです。
 そうしたナマのリアルさを、この物語はきちんと表現してくれちゃいます。
 驚くほど長いお話ですけど、それも全く苦にならないほどのリアルさ。
 冒頭の「隠れコロニー」のシーンは実に幻想的で、こんな場所なら私も住みたい!!と思わせてくれる世界です。様々な人種が自由な発想で学ぶ学園都市「アスカ」。この都市はまさに学究の徒の理想都市ですね。私もそんな場所で学びたかった・・・。
 随所にちりばめられたSF的ギミックも見所の一つです。
 アーサー・C・クラークが提唱した?「軌道エレベーター」や、熱を発しない岩石カモフラージュカー。シド・ミードが描く小奇麗な未来社会ではなく、人間臭さがしっかりと香る世界は、我々がごく当たり前に横浜のランドマークタワーやパリのエッフェル塔を受け入れているように、そこにある当たり前の建造物として受け入れることが出来ます。

 三部作なせいか?「グリーンマーズ」は「え?それでお終いかよ」的な感じなんですけど、ここは一つ、最終話に期待しましょう。
 グリーンマーズは、是非「レッドマーズ」を読んでから読んでみて下さい。
 火星の寒さや、赤い砂でザラザラした感じを「体験」していないと、最初の百人が何故ああも「レッド」なマーズにこだわるのかが伝わらないのかもしれません。
 そう、このお話ですこーしだけ<?>なのが「レッドなマーズを!」な人たち。火星は赤くなきゃいけないという信念が宗教化し、その衝動が破壊行動やサボタージュにつながっていきます。
 んー・・・誰だったか・・・海外の有名な歌い手さんが東南アジアの森林伐採に関して「森林がレイプされている」と歌ってましたね。まさにそんな感じで「火星がレイプされている」「火星を守れ」ということになるわけですけど・・・。
 悲しいことに、私は火星でのそうした発想にはリアルさを感じないんですね。
 命がけでテラフォーミングをしている彼らが、何故「開発のスピードが早い」とか「表面を汚すな」といった発想をすることになるのか・・・。
 いや・・・地球でなら「どんな発想」でも驚きはしないんですけど。(笑)
 色んな人がいますから・・・。

 しかし、リアルさも善し悪しで、この話とは関係ないんですけど・・・時折あまりに不愉快なリアルさで、本が読めなくなることもあります。
 今年に入って二冊、しかも大作で読めなくなったブツがあります。
 一つは二度と読む気はないんですけど、もう一つは10年後には読めそうです。(笑)
 誰しも、自分の腐った部分を鼻面におしつけられたくはないですよね。







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