レプリカントな日々。

2002年07月23日(火) オヤジたちの熱い水泳部。ーーーイスカンダル上陸編ーーー


 様々なフェチを秘めていた3バカトリオでしたが、共通して惚れ込んでいたアイテムがありました。
 ある日、路上にサイフが落ちているのを3人で見つけました。ちゃんとちゃんと交番に届けてしっかり半年間待った後、我々が買ったものは。
 ゴムボートです。

 何故そこまでゴムボートが欲しかったのか。
 我々は藤前干潟で有名な川の、河口付近でいつも遊んでいました。
 満潮時には川は見事に「逆に」流れます。
 いつもその川で釣りをしていたのですが、あまり釣りにも熱心ではないKが、川の流れを眺めているうちに、ふと何やら思いついたようです。
 「川の流れに乗って海まで流れて、満潮の流れに乗って戻ってこれねえかな」
 さすが世界同時革命を夢見ていた男は、言うことが違います。
 私もYもその構想に同時感染してしまいました。
 情熱も気合いも根性もありますから、あとは乗り物だけです。
 最初はドラム缶で筏を作ってしまおうかとも考えていたのですが、どうやって運ぶのかを考えると、それはやはり無理な相談でした。
 3人の夢は次第にゴムボートに傾いていきます。
 スパイ映画で見たゾディアックみたいなカッコイイやつに憧れてました。
 結局、拾ったお金で買えたゴムボートは、2人乗りの小さなものでしたが。

 私たちがいつも遊んでいる橋から河口までは4キロ。
 果たして無事に帰ってこられるのか・・・。
 結局は・・・「コンティキ号漂流記作戦」は決行されませんでした。
 すこーしだけ根性が足りなかったようです。
 それほど大きくはない川とはいえ、我々のゴムボートを浮かべてみると、それはあまりにも小さく頼りなげでした。
 4キロを下って戻ってくる乗り物にしては、あまりにもダサかったんです。

 しかーし、そんなことにくじける3人ではありません。
 代わりに考えたのが「パンチDEデート作戦」です。
 お気に入りの女の子を「川でボートに乗らない?」と誘うわけです。
 2人乗りですからね。ええ。
 可愛い女の子を目の前に、オールをこぐ手にも力が入るってもんです。
 とある橋のたもとから、1キロ程川下にある公園までの遊覧コースを設定してました。ただ・・・やはり小さなゴムボートで大自然に挑むのは、女の子には怖すぎたようで。
 「こ、これに乗るの?」と乗船そのものを拒否した子、乗ったはいいけどあまりの不安定さと川に流される恐怖に泣き出す子。
 結果は惨憺たるものでしたが・・・。

 ま、それはさておき。
 河口付近ですから、当然中洲というものが存在します。
 満潮時でも水没しない、サッカー場くらいの大きな中洲もありました。
 ゴムボートでしか渡れない場所ですから、思いつくことは一緒です。
 2mを越える葦が生い茂る中洲に、我々は秘密基地を作ったんです。(笑)
 ミステリーサークルのように葦を倒して丸い広場を作り、段ボールで差し掛け小屋を作っただけですけどね。
 我々はそこを「イスカンダル」と命名しました。

 休みの日にそこで昼寝をすることが、3人の無上の喜びとなりました。
 コンロで固形燃料を燃やして作ったインスタントラーメンは、いつもバカうまでした。
 釣りもしますから、魚もあったんですが・・・。
 私もKも「そんなもの食えるわけが無い」と一蹴してたんですが、Yだけは「焼いて食う」ことに執着してました。
 「なぁ、焼いて食おうぜ」
 「そんなの食ったら水俣病になるに決まってるだろ」(をいをい・・・)
 「よく焼けば大丈夫だってー」
 「ばーかばーかばーか」
 「ばーかばーかばーか」

 火を使う時は葦原に火が移らないよう、土が露出しているエリアでしていたんですが、Yがライターで大きなボラを焼いている(いじめている?)のを見てかなり哀れになり、仕方ないので焼いてあげました・・・。
 「食え」
 恐る恐る焼き魚を口に運んだYでしたが・・・。
 「まっずー、なんか変な匂いがするぞ、これ」
 「ばーかばーかばーか」
 「ばーかばーかばーか」

 以来、Yは魚を焼くことは、すっかり忘れたようです。
 居酒屋でも、彼が焼き魚を頼む所を見たことがありません・・・。

 かなり荒っぽい使い方をしてたせいで、我々のゴムボート1号は、我々の情熱が冷めるとともに朽ち果てていきました。
 そして、台風でイスカンダルが流されるとともに、我々のゴムボート遊びは終わりました。
 ゴムボートは3号まで続くんですが・・・。
 それは叉別の機会にでも。

 次回は、中学生だった3年間にわたって行われていた、ちょっとホラーな「クリスマスパーティ」をお送りします。







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