台所のすみっちょ...風子

 

 

怒られる上野 - 2002年09月08日(日)

今日、渋谷に出掛けた帰りに、本を見たくて、

ちょいと上野駅に寄り道してみた。

上野もすっかり変わった。

小ぎれいな場所は丸井だけ!なんてもう言わせない。

駅ビルアトレができ、その中にはフラワーショップやら

、輸入食材のTHE GARDENやら、若い娘さん向けの

こじゃれた服屋や食べ物屋があって、

女性にとってはかなり楽しめる

空間になったではないか。

昔の上野駅のイメージとは、ちと違う。

さて、私がお目当ての本を見つけられずに、

アトレ内にある本屋を後にし、

チッ!なんだい!とブツブツ歩いていると、

薄ねずみ色の着流し風な着物を着たオヤジが、

女の子で溢れかえるキッチュな雑貨屋のショーウインドーの

前にドンと立っていた。

オヤジがお呼びでないことは一目瞭然。

腰には黒い帯をキリリと締め、手を後ろ手に組み、

胸を鳩のように突きだしている。ぽっぽー。

威張ってる。

立ってるだけでも近よりガタイのに、オヤジは

なんだか、怒っているようだ。

眉毛がフニ〜とVの字に星一徹調子だった上に

口をむんずと一文字に結び、

下唇は「次行ってみよう!」といかりや長介。

その顔は、怖いけどおかしい。

何故か・・・。

私は気がついた。で、心で静かに言ってみた。

ム〜ラ〜タ〜だぁ〜〜〜。

そう、村田英雄そっくりではないか。

王将を口ずさんでしまうところであった。

惜しい、王将は出だしの部分しか歌えない。

でもその時、なんだか、体が自然に

反応し、気づけば、私の下唇も出ていた。

で、出した瞬間オヤジと目があってしまったのだった。

ゲッ!見られた!怒られてしまう!

慌てて引っ込め、顔を整え、足早にそこから立ち去った。


オヤジは何を怒っていたのか?

私が思うに、失われていく下町情緒を嘆いていたのだ。

若い娘でごった返す店のショーウインドーを一心に

見つめながら、愛するこの上野が、チャラチャラした自由が丘や

原宿、代官山のようになってしまうかもしれぬ、

と腹を立てていたのに違いない。

大丈夫だ、オヤジ、安心しろ!所詮上野は上野だ。


いくら変わったといっても、アメ横当たりが裏原宿の

ように、ファッションチックに変貌するとは考えられない。

あの「へぇ〜い、松茸、買わない松茸。これでぇ〜5000円〜」

というダミ声は死なないのだ。

だから、そんなに怒るな。オヤジ。

これも、時代の流れだ!とドンと構えてこそ、

村田英雄似というもの。

吹けば飛ぶような将棋の駒ではいけないのである。             


                  おしまい。


...




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