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機転。 - 2005年06月29日(水) 私がまだ予備校生だった頃のこと。 ある日、父が東京に出張に来た。宿泊は有楽町の某ホテルであった。 せっかくだからと、有楽町でご飯を食べることになった。 私の父は何かと見栄っ張りなところがある。 待ち合わせをし、ブラブラ歩いて、父が「ここで食うか」と私を誘ったのは 帝国ホテルだった。 さて、二人でロビーを歩いていると、公衆電話の前に立っている外人が、 英語で何か言いながら、私達に向かってしきりに手招きをする。 良く耳を傾けてみると、「ホワット タイム?」と時間を聞いているのであった。 咄嗟に口から英文が出なかった私は、猛ダッシュでその外人のところまで 駆け寄り、自分のしていた腕時計の文字盤を彼に見せた。 その様子を見ていた父は 「なかなか機転が利くじゃないか・・」と感心したそうである。 先週木曜日、友人M子と「アールデコ展」を観るため、 上野の美術館で待ち合わせをした。 美術館は上野の「公園口」にある。 だが、考え事をしていた私が出たのは「南口」。 ほとんど見覚えのない景色に呆然としつつ、 「美術館の周りには木がいっぱい」という覚えだけを頼りに、 緑がこんもり茂って見える方に向かいながら、両脇を高い塀に囲まれた 細い道を歩き始めた。 ところが、行けども行けども、美術館は見えない。 そのうち、見えて来たのは、寺と中学、あとは道の脇に車を止めて 昼休憩をしているタクシーばかりである。 待ち合わせの時間はとっくに過ぎている。 ついに、私は止まってる中の一台のタクシーの窓を叩いた。 「すみません・・上野の公園口ってどこですか?」と。 顔を出した、五十ぐらいのタクシーの運転手さんは親切で、 熱心に説明してくれたのだが、ざっと聞いただけでも遠そう。 私は言った。 「あの〜、休憩中だとは思いますがぁ〜、乗せてくださいなんて・・ ダメですかぁ〜?」 運転手さんは、一瞬、戸惑ったようだったが、ドアを開けてくれた。 案の定、走ってみると距離がもの凄くある。 本当に声をかけて良かった・・と自分の機転に大満足であった。 この機転がなぜ、面接時に出ない・・・。 おしまい。 ...
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