たそがれまで
DiaryINDEXpastwill


2003年03月30日(日) 桜の想い出





本当ならこの週末は、故郷から悪友が訪ねて来る筈であったのだけど
ドタキャンされたので、ぽっかりとヒマができた。
母は明日から来るのだが、身内だもの、片付けに身が入ることもなく
家族で花見に行くことにした。

自転車で20分ほど走った場所に、桜の名所があると聞き
夫を先頭に、4台の自転車で風を切って走る。
日差しは初夏を思わせるほど、空は雲一つない青空。
絶好の花見日和だった。

天満宮の境内に、咲き乱れる
サクラ・サクラ・サクラ

家族連れや職場仲間達がビニールシートを広げ
境内はブルーに染まっていた。
特設ステージでは、カラオケやバンド演奏、
和太鼓などで盛り上がっている。

こんな人混みの中で、花を見るのは久し振りだった。
こんな賑やかな花見の中にいる自分が、ふと場違いな気がした。


桜の花は好きだけれど、あまり良い思い出が無い。
桜の花はどちらかと云うと、悲しい気持ちを呼び起こす。

養父が亡くなって、丁度、初七日の日
養母と私は花見に出かけた。
不謹慎かもしれないが、塞ぎ込んでる母に気分転換をして欲しかった。
賑やかな花見客の横を、沈み込んだ二人が歩く。
それはそれで迷惑かもしれないが、誰もお構いなしである。

満開の花。風で揺らめく花びら。
今まで見た花の中で、一番綺麗で、一番悲しい花見だった。


そして、私がまだ若く、「新婚だね」と言われていた頃
すれ違う夫との関係で悩んでいた時、丁度季節が春だった。
夜中に一人で車を走らせ、桜並木の中を走り抜けると
花びらがフロントガラスに貼り付いて、それがとても悲しくて
泣きながらハンドルを握っていた。

桜は綺麗だけれど、散り際が悲しすぎる。
だから花見は、盛りの前に、いつもそう決めていた。
満開になると、後は散りゆくしかないじゃないか。
それがとても悲しい。



桜の名所は沢山あるし、有名な桜の大木も沢山あるけれど、
私が一番好きな桜の木は、30年以上住んだあの街にある
小さな小さな公園の1本だけしかない桜。

ブランコと砂場しかない公園の、隅で季節をじっと待ってる。
毎日車で前を通るけど、一度も降りて見たことはない。
あの木の下で花見をする人もなく、
夜は街灯がぼんやりと照らしてくれるだけ。



でも、あの公園のあの桜。
今年も綺麗に咲いていてほしい。
来年は「ただいま」って、
家族で見に行くつもりでいるから。

もう、悲しい桜は見たくない。







東風 |MAILHomePage

My追加