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2003年04月03日(木) |
もう一人の母のこと 6 |
慌ただしく、3日間が過ぎた。 初めて、実母が私の家に泊まりに来てくれた。 枕を並べて寝たわけではないが、同じ屋根の下で寝ることができた。
花を見るのが好きな母のために、ハードなスケジュールを組んでいた私は 2日目に土砂降りの雨というしっぺ返しを食らった。 予定していた場所を何ヶ所かキャンセルして、自宅でのんびりする時間に充てた。
湯飲みを手で包み、ニコニコとテレビを見ている母の横顔に 老いを感じてしまったのは仕方のないことだが、 すぐ傍に母がいて、私の作った食事を食べて、 世間話を延々と続ける、なんとも穏やかな時間であった。
最終日、迎えに来た姉達と合流して、久し振りに皆で花見と洒落込んだ。 高原の老桜木であったために、まだ4分咲きだったのが残念ではあったけど・・
母とその桜を見るのは二度目だった。 3年振りの桜の老木。 あの時と何も変わらない老木を、この先、母と何度見られるのだろうか。 そんな事がふっと過ぎったが、縁起でもないので口にはしなかった。
別れ際、何度も何度も「ありがとうね」と言われたけれど お母さん、それは違うよ。 「孝行したぞ」って思わせてもらったんだから 私の方こそ「ありがとう」。
私を養女に出したことで、あなたは苦しんだんだよね。 いつか姉がちらっと話してくれた。 そんな苦しみを与えてしまったことに、申し訳ない気持ちでいっぱいになる。 もっと早く幸せになれていたら、あなたの苦しみを減らせていたはずなのに、 いいトシになってもずっと心配をかけてしまった事が、本当に悔やまれる。
でもね、私が結婚で苦労したことは、あなたの責任ではない。 養女だったから結婚に失敗したわけじゃない。 だから、早く安心して欲しかった。 早く私の新しい家庭を見て欲しかった。 綺麗に咲いている花よりも、見せたいものだったかもしれない。
「やっと安心したよ。」 その言葉が一番嬉しかった。 本当に、本当に、来てくれてありがとう。 久し振りの長距離運転で、さすがに身体は疲れたけれど 心はすっきりと軽くなったよ。 うん、そんな気がする。
疲れて食欲が無いと言いながら、母が持って来てくれた漬け物で ご飯をおかわりまでしてしまった。 本当に母が漬けた漬け物は、いつ食べても美味しいよ。
でもね、漬け方は教わらない。 いつまでも母の漬けた漬け物を食べたい。 だから、ずっと元気でいてね。
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