ミドルエイジのビジネスマン
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「梅割り、ガツナマ、煮込み」 何だこいつ、久しぶりに来やがったな、と思われているに違いない。
「アブラよく焼きのタレ、ダイコンお酢」 隣では、池袋に会社があるという偉そうなサラリーマンと茨城から外回りのついでに寄ったという人が盛り上がっているが、自分は普段こんな下品なところに来る人物ではないが、うまいと聞いてわざわざ来てやったという態度が嫌われるという事に気がついていない。
「ナンコツ終りー」 黙々と飲み、黙々と噛むうちに酔いも回り、昔のことやもっと昔のことを思い出す。
「子供のころは、この辺自転車で遊び回っていたよ。酔っ払ってる親父を迎えに来てよぉ、一本もらったりしてな。俺はこんなところに来るようにはならねえぞと思っていたけど、今じゃ昔の親父とおんなじように通っているよ。」 一日の労働を終え、夕焼けの色もくすみ始めたころにジャンパー姿でのれんを分けて入ってくるのがふさわしかった店も、今ではスーツ姿のオヤジの方が多くなった。偉そうに能書きをたれる客より、毎日のように立ち寄る客が大切にされ、珍しい皿をそっと出されたりする。
ずっと以前、「カシラあるよ」といって貰える程度までは出世したのだったが・・・
敷居が高くなって行けなくなっていたモツ焼き屋ののれんを何年ぶりかで平気な振りをしてくぐった。 「それじゃナニかい? オスのオスってのはやっぱりほんとにアレかい?」
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