デイドリーム ビリーバー
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2001年12月15日(土) 愛が欲しい

「クリスマス何欲しい?」ってきかれて
「じゃあN君は何がいいの」
って言ったら、大真面目に

「宙ちゃんの愛が欲しい」

だって。
この間のアレ程度じゃ、お話にならないらしい。

「足りませんか」
「全然足りませんねぇ」

…そーなのか。すいません。
精進します。


一緒に歩くとき、彼は腕を腰にまわしてくる。
私は、今まで男の人と、手をつないで歩くことすらなかった女なので
歩きにくい。
…ていうか、正直に言うと気になるのよね、わき腹が。

本気でダイエットしよう。


そう、それで、彼はそうやって歩きながら
時々ぎゅうって抱きしめるみたいに
腕をおなかのあたりまでまわしてきて、顔をすりすりしてきたりして

でもなんだか知らないけど、上機嫌で笑っているので

人前でって思いつつ
私も結局、まあいっかなんて流されてしまうのだけれど

時々、そうしながら
「好きー」とか
「かわいー」とか

あげく、「おれのもんー」とか、小さい声だけど言って

そのあと必ず
「おれは?宙ちゃんのもん?」
なんてきいてくるんだけど、
根がまじめな私としては(?)正直に、困った顔するしかなくて
彼をしょんぼりさせている。

「全部宙ちゃんのもんやのに…」

でもね。まだそうは思えないです。

「人は誰のものでもない」とかそういうのもあるのだけれど
それとは別に

法律であったよね。
離婚しても、半年は再婚しちゃいけないっていう。
子供が出来てたら、うんたらっていう。

なんとも不思議な法律だけど
彼とつきあうことになったとき、頭をかすめた。
彼女に、もしも、子供できていたら、って。

なんだか彼は、まだ半分以上、彼女のもののような気がする。


しょんぼりした彼は、反撃に出た。
「そっかー。宙ちゃんが俺のこと好きじゃないんやったら
 しょーがないもんな。俺も他の人とデートしよっと。
 ○○さんやろー△△さんやろー」

色々名前をあげても、私の反応はたいしたことなくて、エスカレート。
「しょーがないから、前の彼女とでも遊ぼっかな」




彼が、私の異変に気がついて、すぐに私の頭を抱きかかえた。

「ごめん。ごめん…」
って、何度も謝っていた。
私は一瞬、何が起こったのか、わかってなくて。

目の前に、彼のシャツの胸があった。
少しぬれてた。マスカラが、少し汚してた。
私泣いてた。


だって、あんな会話の先に出てくるはずの人ではなかったから
たぶん、びっくりしただけだよ。

彼女の話をするときは、いつも、もう少し深刻というか真剣で。
それは私達が付き合う前、彼が、夢をあきらめて
彼女と結婚するかどうか悩んでいたときからそうで、
私達が付き合いだしてからも、罪悪感でいっぱいの彼は
彼女の話をするときはいつも苦しそうで、

こんな冗談みたいな話題に出てくるはずの人ではなくて
不意打ちだったから、びっくりしただけ。

「こんなに早く、こんなふうに、さらっと言うようになるなんて
 思ってなかった。いいことか悪いことかわからんけど…」

だいぶたって、私が落ち着いてから、彼はそんなふうに言った。

「会いたい?」
ずっと聞きたかったこと。
「会いたくならない?」

彼は、首をふった。
「どうしてるかなとは思うけど、会いたいとは思わへん。
 俺に出来ることは、彼女が幸せになるように祈ることだけやし。
 ほんまは…」

彼は、言うのをちょっとためらったみたいだった。

「こんなこと宙ちゃんに言っていいかわからんけど、
 ほんまは、別れたときは、俺はどうなってもいいって思ってん。
 俺のわがままで別れたんやから、彼女の幸せのためやったら
 俺は不幸になってもいいって。」

少し言葉につまりながら、でもおだやかに彼は続けた。

「でも、そんなんただの自己満足かもしれへん。
 彼女はそんなん望んでないかもしれへん。
 それに、俺は宙ちゃんと一緒に生きていきたいって思う。
 宙ちゃんと二人で幸せに生きていきたいから、
 今は…俺も幸せになろうって思う」

あったかい大きい手で、あたまなでられた。
「彼女のことは忘れるようにする」

「忘れなくていいよ」

だって、やっぱり、それは彼の一部だよ。
大切な一部だよ。
すごく複雑だけど。

「ありがとう」
そういったとき、彼の目も、少し濡れてた。


怖がっていたのは私のほう。
彼はまっすぐ私を見ていてくれていたのに。
いつか、彼女のところに戻ってしまうんじゃないかって思って
そのときに傷つくのがいやで
私が、傷つくのがいやで
私ばっかりバリアを張って
一番大切なことを、言うのを忘れていた。

今を一生懸命生きるっていうことを、忘れていた。


好きな人を、どうしたら大切にできるんだろう。

私は、きっとこれから何年も何十年もかけて
それを学んでいくんだ。


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