デイドリーム ビリーバー
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2001年12月21日(金) |
はじめて出会った日のこと |
仕事が終わって、待ち合わせのカフェまで スーツのまま全速力で走ってしまった。
彼が、どんな風に一人の時間を過ごすのか、興味があったので 仕事が終わったことは、あえてメールしてなかった。
彼は、頬杖をついて窓の外をぼんやり見ていた。
たったそれだけのことで 彼女のことを考えてるんじゃないかって 心臓ぎゅっとつかまれたみたいで、涙がでそうになる。
でも泣かない。
つらいのは私じゃなく、 彼であり 彼女なんだから。
彼は、すぐに私に気づいて、すごくあったかい笑顔くれた。 それだけでもうじゅうぶん。
席についてミルクティー頼んだら、彼も紅茶追加した。 テーブルの上には、半分ぐらいしか手のつけられてない つめたくなったコーヒーがあった。 彼はコーヒーが苦手。 「挑戦してみたけど、挫折した」って言って笑った。 …なぜ挑戦。
「宙ちゃん、俺の前じゃ、いつも紅茶やな。 もしかして俺に合わせてる?」
合わせてません。 てゆーか、合わせません、そんなこと。
ただ、彼と会うときって、なぜか、ミルクティーが飲みたくなる。 ミルクをたっぷり入れたやつ。
でも考えてみると、女友達との時はコーヒーが多い。 大人ぶって語りたいときね。 コーヒー飲むのが大人って思っている時点でガキかしら。ほほほ。
家でリラックスしてレンタルビデオ見るときは、ミルクティー。 朝が洋食の日もミルクティー。 ケーキと一緒ならレモンティー。 チョコレートケーキならコーヒー。
本を読むときは、集中してしまうので基本的に飲まない。 読みはじめにコーヒーひとくちかな。 で、そのコーヒーの匂いの中で読むのが好き。
そこまで言ったら 「なるほど。そう言えば、はじめて会った日もコーヒー飲んでた」 って。
あれ?
はじめて会ったのは、飲み会だから、お酒のはず。
知り合ってから1年ほどは、 月に1度の異業種飲み会でしか会ってない、はず。 彼は、いたずらっぽく笑った。
「飲み会の前に、スタバで一人で本読んでたやろ」
あの日の飲み会は、7時開始だった。
彼はその日 その近くのスタバで仕事の打合せをしていて、 相手が席を立った後も、ひとりで書類に目を通していて
ふと見ると、向かいの席に 音が出ないように設定してある携帯がピコピコ光っているのに 気づきもせず、本を読みふけっている女がいたんだそうな。
「あんまり夢中で読んでるから、なんかかわいかった」
あの日私は、仕事が早めに終わって、飲み会まで時間があったから 飲み会場近くの、あまりこんでない店の隅っこで やっぱりコーヒーをひとくち飲んで 大好きな作家さんの新作を夢中で読んでいた。 なにしろ待ちに待った新作で 約束の7時はとっくに過ぎていたけど、携帯の着信には一向に気づかず
そのうち、彼の携帯がなったらしい。 飲み会の集まりが悪いから、お前も来いって。
私は、結局、予定より30分以上遅刻。 その日から新メンバーになった彼より、一足遅れて、店に入った。 彼は私を見て、驚いて、ウケたらしいけど 新参者だけに、つっこみを入れることもできず
遅れた理由をみんなに聞かれて、私は 「いのちの洗濯」とかなんとか言っていたらしい。 …そういえば言った気がする。 それで、酔っ払い達に“鬼のいぬまの洗濯”と間違われて 全然違う話に流れていったような気も…。
「じゃあ、私が飲み会に遅刻しなかったら、 N君にお呼びがかからなかったかもね。 そしたら、会うこともなかったかも…」
「いや、会ってたよ」ってN君が言った。 「絶対どこかで出会ってた。そう思わん?」
もー。なんで、そんな嬉しくなるようなこと そんな笑顔で言ってくれるんでしょうね。 そんなこと言ってもらっちゃって、ほんとにいいのかな。
「さっき、宙ちゃんが来るまで考えててんけど、 クリスマス、指輪買おうか」
それは、 まだ早い気がして、心の中で一瞬にして却下した案だったので 言葉を失っていたら
「ペアで」 って付け足された。
私、今まで指輪ってしたことないのよね。実は。 ペアリングってのも、私のキャラ的に、一生しないだろうとか、思っていて
「いややったらいいけど…」 「いや…ではないけど…えーと」
最初は混乱していたけど 話しているうちに、結局そういうことになって 閉店間際のごったがえすアクセサリー売り場に、二人で行って
彼はもうすでに、いくつか候補をしぼっていて いろいろ指にしてみたりしながら、二人で選んで あれよあれよというまに、買ってしまった。
で、男物の方の包み渡されて 「クリスマスの日に、交換しよう」 って。
あのあのあの。 私、そういうイベント系苦手なんだけど。
混乱と
うれしさと
慣れてるなぁ、っていう、ちょっと複雑な気持ち。
どんな気持ちにも目をそらさずに、うまく付き合っていけるような ほんものの強さを身に付けたい。
その先へ、踏み出せる力を。
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