ディリー?闇鍋アラカルト
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2004年02月29日(日) 猶予ある死

「ブラックジャックによろしく」の8巻が出た。
5巻から始まる「がん医療編」の最終巻だ。
辻本という平凡な主婦が膵臓癌で死ぬまでが描かれている。
その中での医者の言葉。
「僕はがんでは死にたくないと思っていました。・・・一歩ずつ近づいてくる死におびえながら・・・ただ絶望の中を生きるなんて絶対に嫌だと思っていました。・・・こんな事を申し上げる事をどうかお許しください。・・・・辻本さん、僕はあなたのように生きて死んで行きたいです。・・・」

僕は1975年に「死の瞬間(講談社)」を読んでいる。著者E.K.ロスが死に行く患者たちと語り合い、その過程を記録した本である。
著者は患者に当然告知しているが、その時代では告知は行われていない事が多かった。日本でも告知すべきかどうかが議論されたりもしたが、告知すべきでないと考える人が多く、実際に告知される事も殆どなかったようだ。
僕自身は告知すべきであると考えていた。
それが、その本を読んで自分の考えが裏付けられたと感じたのだが・・・・それから29年。コミックの世界でそのテーマが扱われるようになったのだ。
コミックも成熟して来たものだなと感無量だ・・・
この巻の終わりの方で主人公斉藤は「がんは死と向き合い・・・残していく人たちに別れを告げる時間のある病です・・・もしもきちんと終末期のケアを受けられるならその死は決して不幸ではありません・・・・・・・僕はがんで死にたいです・・・」

「僕は癌で死にたい」という言葉はそれ以前にも見た事がある。
その言葉を言ったのは「患者よがんと戦う事なかれ」という本の著者で医師でもある近藤誠さんで、「良くない治療ダメな医者から逃れるヒント(講談社)」の座談会の記事にあったように記憶している。同席した人も同意していた。

僕は高校時代に父親を突然失っている。
だから、死ぬのなら突然の死ではなく、猶予の時間の有るような死でありたいという思いもある・・・・
いや、今がその猶予の時間だという気持ちで今を生きるのがきっともっと大切な事なのだろう。
そうすれば突然の死であっても悔いは少ないはずなのだから・・・・


いなっち |MAILHomePage

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