2003年06月02日(月) |
SSS#48「瀬戸口×速水 らぶらぶ?」 |
【kiss,kiss,kiss】
星降るような夜の下、ため息を誘う、ふたりの食卓。 ふたり分の料理を前にし、ひとり頬杖をつく。 折角、彼の好きな和食にしたのに。 おひたしも煮付けも、頑張ったのに。 昼間から悪かった速水の機嫌は、今最高に最低だった。 女の子と仲良く腕を組んでの去り際、夕飯までには帰ると言ったのに。
「嘘つき…」
そもそも目の前で堂々と浮気をされているのに、律義に彼のために夕食を作る自分こそおめでたいと、速水は頭に来るのでその点を考えないようにした。 今日の女の子は速水の目から見てもとても可愛い子で、腕を絡めた瞬間に瀬戸口がめちゃくちゃに嬉しそうな顔をしたものだから、怒りも倍増だ。
「ただいま」
帰ってきた。出迎えてなんてやるものか。いや、自分の家でもないのに「ただいま」とは何事だ。
「あっちゃーん?」
食卓につっぷしたまま動かない速水に、まことに気の抜ける声で呼びかける色男。 いつもいつも愛してるとか好きだとか。言葉だけじゃ信用ならない。 だから呼ばれても顔も上げない。 瀬戸口は困って金茶の髪をかき混ぜる。
「…悪かったよ」
そんな気の抜けた詫びで反省しているつもりなのか。 誠意を見せろ、誠意を。 今度はしなだれかかってくる。色仕掛け。 なんでこんな男を好きなんだ、僕は。 あまりにも腹が立ったので、速水は彼のいちばんの楽しみを奪うことにした。 すなわち、浮気が出来ないように。
「速水?」
戸惑う瀬戸口を引き寄せて、首筋に口付ける。 ちゅぅっと音を立てて、瀬戸口が顔をしかめるくらい、きつく。 非常に目立つところに痕がついた。 馬鹿な男は恋人の怒りが治まったのだと誤解して、だらしなく頬を緩める。 速水はかまわない。 黙って彼のネクタイを緩め、鎖骨の辺りにも華を散らす。 普段は大人しい恋人が今までに類を見ないほど積極的に迫ってくれている。と、瀬戸口にはそう見えた。 速水が可愛くて可愛くて仕方が無くなり、キスを返そうとする。 が、両手で口をふさがれ、ぐいと押し戻される。
「む…?」
不思議そうに速水を見つめてくるアメジストの瞳。 この男はまだ判っていないらしい。 速水は言う。
「僕が瀬戸口さんに触ってるんだから、邪魔しちゃダメ!!」
瀬戸口は一瞬きょとんとしたあと、嬉しそうに頷いた。 速水がまだ怒っていることは認識したようだが、速水の目的が「女の子に負けないぐらい瀬戸口といちゃいちゃすること」であると解釈した彼は、どこまでも幸せな人らしい。 そもそも、可愛い女の子に腕をとられ、その瞬間に速水が物凄く怒ったような顔をしたのを見て幸福状態になる男である。 「あっちゃんがやきもち妬いてくれたーvvv」と喜んでばかりいるから、速水の意図にも気づかないのだ。 速水は口付けを止めない。 瀬戸口は煽りに煽られてもはや止めようというそぶりすら見せず、逆に先を促がすように優しく髪を梳るばかりだ。 そうして瀬戸口の呼気が乱れ切って今にも襲いかかって来る…という段階になって唐突に、速水は身体を離した。
「厚志…」
熱っぽく名を呼び掛ける男を速水は、叩き出した。 夜の中へ。 星は降るばかりに近く、涼やかに虫の声が己が美声を競っている。 瀬戸口は何が起こったのか判らずに、びっくりした目をして泣きそうな顔で速水を見た。 訳もわからず、突然飼い主に捨てられた犬みたいだったが、飼い主…もとい彼の恋人は、すがるような目を無視してぴしゃりとドアを閉めた。 そして全部の窓の戸締りを確認し、カーテンを閉めて眠ってしまった。
***
「おはようございます、瀬戸口十翼長。 こんな早朝から貴方の姿が見られるなんて珍しい」
善行はそう言ってから首を傾げた。いつもなら一言えば十返ってくる、口が達者で生意気な部下が、今日は寡黙に一礼しただけだったのである。 まだ朝露の残る校門前で、彼は善行など殆ど目に入っていない様子で真剣に何かを待っている。 善行はふと思いついて声を掛けてみた。
「速水君なら今日はきませんよ」
ギギッと音のしそうな機械的な動きで首を回す色男。
「なんで?」
上官に対する口の訊き方ではなかったが、目が怖い。 善行は思わず1歩退いた。
「彼は今日から岡山に出張に行きました。 一週間ほどで戻りますが…」 「俺は聞いてないぞ」 「私だって聞いてませんよ」
訝しげな顔になる彼に、善行は懇切丁寧に説明してやった。 曰く、出張は速水が望んだものであったこと。 昨夜突然速水本人から電話があり、無理やり今朝からの出張をひねり出させられた事。 だいたいこの目の前にいる瀬戸口といい、彼の部下は上官を上官とも思っていない不届き者揃いなのである。 ある意味達観している善行であった。
「速水は帰って来ないのか? …一週間も!?」 「か、彼がそうしたいって言ったんですよ」
善行、さらに退く。 完全に守勢に回っている。 だが、彼が生命の危機を感じる必要は全く無かった。 なぜならば、漸く事態を認識した瀬戸口は、真っ白に燃え尽きたボクサーの如くその場にへたり込んでしまったからだ。
後に瀬戸口に言わせると、それからの一週間ほど辛い日は、後にも先にもなかったそうである。 あれだけ煽った当の速水は居ない。 そして、瀬戸口がいくら瀬戸口でも(?)キスマークのバッチリついた身体で女性たちと愛を語らうほどには、厚顔無恥になりようも無かった。 実際、痕は2、3日で消えたものの、そういう手段に出た速水の気持ちを思えば基本的に速水を愛している瀬戸口には、浮気など不可能事であった。 もしも万が一、この時浮気をしていたなら瀬戸口は100%捨てられていただろうから、ある意味彼は自分を救ったとも言えるだろう。 とにかく、出張から帰ってきた速水は善行への報告もそこそこに攫われ、瀬戸口共々一週間の間姿を見せなかった。 そして部下に舐められっ放しの5121小隊司令官は、こっそり枕を涙で濡らしたとか濡らさなかったとか...。
Fin ――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――― なんと5月の間は2回しか日記を書かなかったのですね。 びっくりです。 忙しかった…というよりもSSを書いていたからなのですが。 近況報告のために設置したのですから、近況報告ぐらいするべきなのに(笑) 7月の頭に筆記テストがあるので、前前から言っていましたが、6月中の更新はオヤスミさせて頂きます。 SS書きたい病が発生したら、日記に駄文を書くやもしれませんが、基本的には日記もオヤスミします。 今でも休業状態だというツッコミはなしです。本人も判っておりますので(笑)
さてさて。どんなに追い詰められても欠かせないのは美女との会食。 5/21にはシラタマ嬢と、そして5/24には遠野さんとえぬぐちさんと、ごはんをしてまいりましたv いつも思うのですが、シラタマさんはほんとにお美しいですよー。 いや見た目も綺麗なんですが、立ち振る舞いとか仕草とかいちいち洗練されてて見惚れてしまいます。 頭の外見もたいへんなのですが、頭の中身も素晴らしいです。 その知識の広範ぶりにはいつも驚かされます。 才色兼備って、きっとこういう人のことを言うのだ。ニンニン。
遠野さんは、お会いするのは実に一年ぶり…に届かんとするぐらい。 お久しぶりでしたv お仕事で徹夜明けなのに引っ張り出してしまいましたよ。この機会を逃したらいつ会えるか判らないとはいえ…。 快くお付き合いくださって感謝感激です。 それにしても、お久しぶりなのにお久しぶりの気がしない…。最初から大変なテンションで盛り上がってしまいました。 野菜ネタとか…てんぷらネタとか…。 次から次へとお話をぽんぽん思いつかれる遠野さん。笑いすぎてほっぺたの筋肉が痛くなりました。 それにしても…真顔で下ネタを詰めるのはよしましょう(笑) 凄い楽しかったですよ…。まんぷくまんぷく。 また遠野さんには遠からずお付き合い頂きたいところです。 で、何かと神矢の被害に遭っていらっしゃるえぬぐちさん。 またしてもすみませんでした; 3時ぐらいから付きあわせてしまったから、一番感染率が高いかもしれません(神矢ウイルス) いいですよーvえぬぐちさんは。白あっちゃんみたいでほわんとした雰囲気で。 いつお会いしてもとっても可愛らしいですvvv でもお話していると、意外とブラックな一面もあったり。まさに速水(…え?) 空耳アワーには笑いました。 えぬぐちさんが「瀬戸口ってギャルソン似合いそうですよね」とおっしゃったのを、神矢は「瀬戸口って食べ放題(ケーキ)似合いそうですよね」と聞き違えたり。 あり得ない。 一文字たりとも合っていない。 でも私の脳裏には、女子高生たちに混じって嬉しそうにケーキを食べる瀬戸口の姿が…。 どう考えてもえぬぐちさん(速水ファン)の中の瀬戸口の方がイイ男です。 一体私はどこで何を間違ったのやら。
そんなこんなですっかり充電した神矢。 せとはや熱急上昇☆ SS書きたい病を押さえつつ、頑張ってこの一ヶ月を乗り切ります!
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