2002年08月26日(月) |
東京JAZZ 2002 その2 |
調布・東京スタジアムでのコンサートも二日目。 来日組は同じメンバー。
今日は、ノルウェイの新進トランぺッタ―、ニルス・ペッタ―・モルヴェルのバンドの話から。「新進」といっても彼はロック系から来た人。 楽器もさまざまなリード楽器を経てトランペットにいたった人です。 音は幽玄なエレクトロサウンド。当然のようにエフェクトされた音です。モロッコ音楽の影響もかなり深いですね。
バンドの構成が、ドラム、ベース、ギター(シンセギターも)、トランペット、そしてDJがふたり。一人はディスクを廻してもう一人はノートパソコン。 リズム音とシンセの音のキーをパソコンで変調させたりずらしたり速度を変えたり。全身タトゥーの細いお兄ちゃんがクールに決めてましたね。 ハンコックのカルテットにもDJはいて。いまやジャズのグループにもあたりまえになってきてます。ハンコックがはじめたこと。 というか亡くなる前のマイルス・ディヴィスがラッパーを起用したというのがそもそもですが。
ハービー・ハンコツク自身がマイルスのコンボに在籍していたこともあるのか、マイルス・フォロワーがふたり登場しました。 一人はこのモルヴェル。もう一人はハンコック・カルテットのウォレス・ルーニー。ふたりとももろにマイルスでした。
モルヴェルはバックステージでのインタヴューにこたえて、自分はトラディショナルなジャズはまったく聴いていなくて、マイルスの「イン・ア・サイレント・ウェイ」を聴いてトランペットをやりだしたんだ、と答えていました。 まさにそれはステージに反映されていて、「サイレント・ウェイ」の世界を純化させ、そこに優れた機材とモロッコとヨーロッパの色彩をつけた、という感じでした。
さて、つぎはハービー・ハンコックのバンド。名前がアルバムと同じ「Future2Future」。前述のウォレス・ルーニーの音はどう聴いてもマイルス。 そこにベース、ドラムス、DJそしてキーボードがもう一人。 マイルスに詳しい人ならピンと来ると思いますが。ツイン・キーボードはマイルス・コンボの黄金期の編成です。チック・コリアとハービー・ハンコックのふたり。 余談になりますが今や日本を代表するジャズアーティスト、小曽根真はハイティーンの時にチックコリアを聞いてジャズをやリ出したといいます。
ハンコックに戻りましょう。演奏はパワフルでイマジネイティヴで骨太でニュアンスが豊富。しかも題材が幅広い。 いってみればマイルス・コンボを彷彿とさせるもの。ただし、ウェイン・ショーターがいないだけ。 ユニークだったのはドラムスが女性だったこと。パワフルな音なんだけど、彼女、小さいすらっとした「女の子」なんです。とても新鮮だった。テリ・リン・キャリントンといいます。 しかも、冒頭にハンコックによるポエットリー・リーディングがありました!!! 日本語です!!!知恵と知識の違いについての言葉でした。 『時を知り 時を創る 要諦は知恵です』みたいに聞えたんですけどね。
さて、その後は昨日のトリをつとめたブエナ・ビスタ・ソシアル・クラブとオマーラ・ポルトゥオンド。水のような生き物のようなバンドの音と天性の表現力あふれる声のオマーラ。最高でした。極めつきの「ベサメムーチョ」を聴けました。 素晴らしい。人間、もっと恋をするべき、と何故か思いました。
最後は昨日のスーパー・ユニツト。相変わらず絶好調のマイケル・ブレッカーのパッション溢れるようなテナーがよかったです。 寺井さんも一生懸命。彼女、こんな体験なかなかどころか、もうできないかもしれませんね。
と、終わってみればハービー・ハンコックの仕掛けたマイルスとコルトレーンへのオマージュだった感が強いです。これからのジャズはまさにこのふたりが提示した新しい地平へもう一度踏み出していくんだ、という決意が見えましたね。 死んだジャズじゃなくて活きたジャズ。そのためのひとつ方法だったと思います。
演奏そのもはスリルに満ちていて素晴らしかった。当分また、ジャズを聴きそうです。
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