散歩主義

2002年10月04日(金) 本をめぐるお話

京都新聞の文化欄の連載コラム「京都の本の文化は今」。9月27日付けの第17回は、ミメイさんの「溺レルアナタ」を出した、「ゴザンス」がとりあげられていました。代表の深水英一郎さんは京都在住(となっています)。ネット利用者のほとんどが知っているメルマガの配信システム「まぐまぐ」を立ち上げた方です。
そんな彼がインターネットの普及に逆らうかのように紙媒体の発行に踏み切ったのです。それがタブロイド誌「ゴザンス・マガジン」。
確かにインターネットは、誰もが書き手になれる、書き手と読み手の直接の双方向のコミュニケーションが可能となるという、革命的な特長を持っています。

だけどメルマガが万を超える点数(約2万点を記録したそうです。ちなみに利用者は200万人以上)となると読みたいものをどう選ぶかが問題になってきました。
そこで氏は紙の持つ「情報内容をパッケージする力」に着目したんですね。
ようするに読みやすくするにはどうするか、という模索だと思うんです。
分量に制約を設けることで、作品本数と内容も洗練されています。これは現にゴザンス・マガジンを購入していたので、ぼくにはわかりますが、今ゴザンスのサイトに行けばオンライン版のマガジンは読めます。だけど、寄せられた記事・作品全部目を通せるとして、膨大な量ですよ。読んでる最中にも寄稿者から新しいアップがあったりするのです。とても無理。(しかし、編集部の人は読んでいるんですよね。・・・)。紙媒体だと目次と読み方が書いてあるのでとても効率的です。

あと、これは家のイエモン殿の意見なんですが、本はいつでもどこでも広げて閉じてが自由自在。その利便性はネットの比ではないと言います。

さて、ゴザンス内部のシステムとしては投稿はもちろん編集会議もネットをフル活用だとか。なんせ東京と京都でしょ。
さらに実際の本の編集・制作もネットとPCの力を最大限に利用しています。

さっきチラリと書いた「内容の洗練」によってライターも力をつけ、オンデマンド出版は24点をこえたといいます。
「両方の長所を取り入れさらに進化」と見出しにありますが、まさにそのとおりの進化をとげそうな可能性に満ちている感想を持ちました。

さて、今日は連載の18回目。今回の話題はばりばりの電子出版。紙媒体ではありません。ネット上の閲覧ですね。(で、たぶんダウンロードして紙に印刷となるんでしょうが)
論旨をつめると論文や学会誌は圧倒的に電子出版に利便性がある、ということです。つまり「調べものをするのに図書館に行く必要がなくなる」というオンラインジャーナルの利点がかいてありました。

ただし、学会誌は開かれる学会の費用で運営され、論文は無料公開です。しかし、商業出版ではどうでしょうか。ネットは基本的に無料です。お金を払うのは一部の辞書かアダルト系ぐらいです。それと仮にお金を払ってダウンロードしてもいくらでもコピーが可能という問題もあります。

それでも「ちいさいうちから画面で文章を読む人が主流になれば、紙の本を読む、という長年の慣習も変わっていく可能性もある」という識者の意見もあります。

いずれにしろ本をめぐる状況は、編集、印刷、出版、小売まで大きな変化を余儀なくされるのは間違いなさそうです。




 < 過去  INDEX  未来 >


にしはら ただし [MAIL] [HOMEPAGE]