あたたかなおうち
華

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■ 寝息

眠っている祐ちゃんの隣に潜り込む。

小さな布団は人ひとりの体温で十分に温まる。
まるで身体の中で守られているような感覚を覚える。

祐ちゃんの隣で眠る時間が、一番すこやかな気がする。

ゆっくりと呼吸する胸に頬を寄せると
祐ちゃんは私を包み込むように抱きしめて
またすぐに穏やかな寝息を立て始める。

2005年03月31日(木)

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■ 冊子

祐ちゃんの部屋で、手作りの冊子を見つけた。
表紙に、かわいらしい字で「先生へ」と書かれている。


生徒ひとりひとりのメッセージと、保護者の言葉。
たくさんの思い出の写真が散りばめられている。

「5年生になってもまた先生のクラスになりたい」
「今までで一番好きな先生です」
「新任の先生ということで、最初は少し不安でしたが
子供たちと向き合って一生懸命指導していらっしゃる姿に
安心してお任せすることができました」

「本当にありがとうございました」


自分のことではないのに、私はたまらなく嬉しくなる。
祐ちゃん、これもらって泣いた?
祐ちゃんはそっぽを向いて笑う。
ないしょ

涙もろい祐ちゃんは、きっとたくさん泣いたに違いない。
来年はどんなクラスになるのかな。

2005年03月30日(水)

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■ 実家

初めて祐ちゃんの実家に行った。
祐ちゃんの家族に会った。

うち、本当に狭いよ
祐ちゃんが何度も何度も言う。
緊張して何も答えられない私に気づき、
祐ちゃんは優しくささやく。
大丈夫だよ、俺の家族だから

団地の階段を上がっていき、
鍵のかかっていないドアを開ける。
ただいま
ここが、祐ちゃんの家だ。


祐ちゃんを産み、育ててくれたご両親。
祐ちゃんが愛してやまない弟たち。
思い出話にしか聞いたことのない
私の知らない、祐ちゃんの時間。
そこに参加できたことが、私は本当に嬉しくて
胸がいっぱいになってしまって言葉がうまく出てこない。


私は、祐ちゃんの家族を大好きになる。
心からそう思えた。
それは、とても幸福なことだと思った。

2005年03月29日(火)

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■ 終業式

昨日は祐ちゃんの小学校の終業式だった。


スーツ姿で帰ってきた祐ちゃんを、私は両手で迎え入れる。
祐ちゃん、1年間本当にお疲れさま
祐ちゃんは笑顔で、ゆっくりと私を抱きしめる。
ありがとう。ただいま
持ち上げられそうになりながら、
祐ちゃんの厚い胸に顔をうずめる。
スーツのにおいが心地よくて、
玄関先だというのに、しばらくそのまま目を閉じる。


2005年03月25日(金)

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■ 洗濯物

忙しい祐ちゃんは週末に家事をするので
一週間分の洗濯物が山のようになる。

たたんであげるよ
祐ちゃんが仕事をしている横で
私は見かねて乾いた服をたたみ始める。

夢中でたたんでいると
突然、後ろから抱きすくめられる。

奥さんみたい
祐ちゃんが優しく呟く。
俺の奥さん
暖かな体温が伝わってくる。

奥さんになったら祐ちゃんにたたませるから
私は笑ってわざと祐ちゃんを振りほどくような仕草をする。



2005年03月18日(金)

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■ 山

祐ちゃんは昨日から林間学校に行っている。


連絡は取れないと思っていたのに
夜遅くに電話が鳴った。


風邪は悪くなってない?
私は一番心配だったことを聞く。
うん、大丈夫。華のおかげですよ
電話越しの声は、昨日より少しだけしっかりしている。


今、ベランダに出てるんだよ
受話器から聞こえる音と言葉で
私はその世界がありありと脳裏に浮かぶ。


不思議なもので、会えないときのほうが
相手のことを鮮明に思い描くことができる。


2005年03月03日(木)

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■ 風邪

いつもよりずっと熱い祐ちゃんの手に気づいて
私は不安にさせまいと最大限の努力をする。


熱が出ると、人はどうして寂しくなるのだろう。


私にぴたりとくっついて離れない祐ちゃんの背中を、
私はいつまでもいつまでも、
できれば一晩中さすり続ける覚悟でいる。


2005年03月02日(水)
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