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| 2025年11月12日(水) ■ |
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| 『ぼくらはここにいる パール兄弟2025』 |
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『ぼくらはここにいる パール兄弟2025』@Shibuya CLUB QUATTRO
オリジナルギタリスト(って呼称あるのか)による「Self Control」と「Get Wild」が聴ける日が来るとは〜レコーディングにまつわる貴重な話も沢山聞けた〜 #パール兄弟 #小室哲哉
[image or embed] — kai (@flower-lens.bsky.social) Nov 13, 2025 at 0:59
----- パール兄弟(Vo:サエキけんぞう、G:窪田晴男、B:バカボン鈴木、Drs:松永俊弥) Support G、PC etc.:米内山尚人 Guest Key:小室哲哉 -----
新譜『ぼくらはここにいる』リリパ、かつ来年の40周年(!)を渋公で迎えようプロモーション。なんですが、今回の目玉はなんといっても小室さんがゲストというところでしょう。ビックリした! クアトロで小室さん観られるとかすごくないか。TM Networkの「Self Control」「Get Wild」のギターを窪田さんが弾いているという縁から今回の企画が出たようです。サエキさん曰く「小室さんが『恩返しがしたい』って。あのひと『あのときはお世話になりました』『恩返しがしたい』が口癖ですよねもう」「すごい腰の低いいい方ですよ!」。またそういういい方する〜。
これなー、個人的には長年モヤモヤしてた案件だったのです。わたくしTM Networkは5枚目のアルバム『humansystem』迄はガッツリ聴いていて、人生で初めて買ったCDは『Gift for Fanks』な人間なんですよ。東海ラジオの『SF Rock Station』も毎週聴いてたんですよ。小室さんがプロデュース業で大大大ブレイクし、TKと呼ばれ出した辺りから遠ざかってしまいましたが。あ、でもGlobeはデビュー当時観たな…これ教授も出てたし……。
で、リリース当時「Self Control」のギターは窪田さんだとちゃんと名前が出ていたんですね。「贔屓と贔屓が共演!」(当時は推しという言葉などない)とか喜んでた訳です。ところが「Get Wild」はどこを探しても演奏者のクレジットが見つからない。「あの音は絶対窪田さんだろ? 何で名前出さないの? 大人の事情でもあるの!?」とずーーーーーっとモヤモヤしてたんですよね……。そのうち松本孝弘だという噂だけが大きくなり。当時TMに関わっていた主なギタリストといえば松本さんと北島健二で、音からして北島さんではないだろうと。いやいやいや窪田さんでしょ! とずっと根に持っていたのです。我乍ら執念深い。
・小室哲哉「Get Wild」を語る(2017年)┃サンレコ ・アニメ×音楽の常識を変えたTM NETWORKと「シティーハンター」のコラボ<後編>(2019年)┃Cocotame 窪田さんの名前が出だしたのはここ10年てとこでしょうか。
・【実話】「Get Wild」のギタリストがアスファルトタイヤを切りつける音に敏感だった話(2021年)┃ロケットニュース24 おまけ、今回検索していて見つけた。こんな記事あったのか(笑)。
まあ当時は小室さんも忙しかっただろうし、数年後はもっと忙しくなるし、その後色々ありましたし、窪田さんは窪田さんでスタジオミュージシャンとして弾いた楽曲は1000曲はくだらないようなひとなので、お互い細かいところは憶えていないようでした。以下その経緯などをメモ。記憶で書いているのでそのままではありません。話が前後していたところもまとめちゃってます。サエキさんに倣い「Self Control」=「セ」、「Get Wild」=「ゲ」で表記します。
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窪田:(いちばん最初の接点は)おニャン子クラブに小室さんが楽曲提供して、そのギターを僕が弾いたんですよ。業界用語でインペグ屋と呼ばれているスタジオミュージシャンの紹介所から、「このスタジオに○日の○時に来てください」といわれて。 サエキ:とっぱらいでギャラが出るんですよねー。 窪田:「セ」もインペグ屋さんの紹介で。再会して「ああ、あのときはどうもどうも」とかいって。スタジオに入ったときまだ小室さんは来ていなくて、譜面渡されて「適当に好きにやっててくださーい」とか(ディレクターに?)いわれてカチャカチャやってたら……。
小室:僕が着いたときにはほぼ出来てましたよね(リフとかフレーズのアイディアのこと?)。テイクもそんなに重ねなかった、3〜4回ってところじゃなかったかな。あの「チャカチャーン」が僕らを救ってくれました。窪田さんのおかげです。 サエキ:何をおっしゃる! 小室:いや、ほんとに。僕らepicに所属していたんですけど、アルバム3枚出してもヒットが出なくて、次がダメならもう契約切られるってところで。崖っぷちだったんです。 サエキ:崖っぷち! 『カイジ』でいうと鉄骨渡りですね! 小室:『鬼滅の刃』で言うと無限城の底の底の奈落ですね。 (喩えの違いに笑いが)
小室:あの「チャカチャーン」は「チャカ」と「チャーン」を別々に録ってるんです。音を左右に……3時と9時の方向っていうんですけど。移動させて鳴らしたかったので。あのときは「セ」をシングルにするかも決まってなかったんです。結果ヒットして「ゲ」に繋がりました。 窪田:今はいっぺんに録ったあと編集出来ますけどね、コンピュータで波形とか見られない時代でしたから……。当時のデジタルサウンドでの音づくりは、TMとTo Be Continuedが頭抜けてました。 (そうなんだー!(窪田さんのいうことは大概鵜呑みにする)) サエキ:1986年ですね! その頃私たちは『鉄カブトの女』をやってました!(ウケる)
小室:今日はチャカチャーンはやってくれないの? 窪田:やー、ライヴでやるのは難しくて……(笑)ギター一本で音を振るのは。違うアレンジにしました。 (これがまたえれえ格好よくてな! いいもの聴けた)
小室:「ゲ」のギターもね、あれを弾けるのは窪田さんしかいませんね。4つの音階を16分音符で。 (アレな!) 窪田:いや、そんなことは……(謙遜)。
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サエキ:まっちゃんはね、渡辺美里さんとずっとやってるもんね。 松永:9日で僕最後だったんですよ(ツアーのこと?)。 小室:僕の話出ました? 松永:はい。『eyes』とか『ribbon』の完全再現とかもやってるんですよ。皆でわいわいどうやろうかって相談して作っていて。楽しかったです。
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バカボン:僕もインペグ屋さんからの紹介で、面と向かっては会わないままじゃなかったかな? 曲名もまだない、誰が唄うのかも知らない状態で、「Ring M-1」みたいな仮題が書いてある譜面だけ渡されて。こっちもギャラがもらえればいいやって感じで弾いて帰って、完成したものも知らないままで。 小室:台湾のアーティストですね。結構売れたんですよ。 バカボン:そのあと『リング』って映画が大ヒットしたのよ。あの怖いやつ。「えっ、これってあのときの……!?」ってしばらく思ってた時期があった(笑)。(アーティストの)Ringって知ったのはかなり後になってからでした。
サエキ:私はEUROGROOVEで英詞を書かせていただきました! その節は有難うございました!
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という訳で全員と接点あったんですね、窪田さんと松永さんのことしか存じ上げませんでした。こういう企画があると俄然サエキさんが張り切って、あれもいわなきゃこれもいわなきゃって感じで喋りまくってものすごい勢いで片付けようとするので、小室さんに失礼はなかったかと心配になる。段取り魔ですからね……全部やろうとするから逆にやっつけ仕事みたいに見えちゃうんだよ。今になって気付いたがサエキさん「何いってんの(早口)」が口癖だな。
小室さんがテキパキとセッティングしてるときも、窪田さんは「いや〜、見てて惚れ惚れするよね。料理人みたい」とかいってたんだけど、サエキさんはまだですかみたいなこというし。なんか手弾き分とループに乗せる分のパターンをつくってたみたいで(あとアナログシンセのあたためみたいなことやってた)、「延々やっちゃうんで始めちゃってください」とか小室さんが答えたら「はいっ、それじゃやりましょう!」みたいな受け答えでな。そこ迄詰め込んでも終わってみれば3時間。濃かったわ……。
共演曲は「セ」と「ゲ」、それだけかと思っていたら、レコーディングにも参加した『ぼくらはここにいる』から「RUN-NEW バックステージ」、そして「快楽の季節」にも参加してくれた。演奏に夢中なシンセ小僧(少年といいなさいよ)っぷり、プログレ大好きなのが伝わる。いいもの観た……。そうそう、サエキさんの声がところどころ宇都宮さんに似ててビックリした。「アスファルト〜」のタンギングとかそっくり! 寄せて唄ってたのかも知れないけど新しい発見。
衣装も合わせてくれて有難い話です。ひとりだけリボンタイしてたところがアクセントでしたね、似合ってた。これに懲りずにまた機会がありましたら宜しくお願いします……。
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ゲストがゲストなのでその話に終始しそうになるが、パール本体の話もちゃんと書き残しておきたい。バンドにとって結構重要なライヴだった。以下おぼえがき。
・アレンジ変更に伴い骨太な演奏が増えた。「TRON岬」前にバカボン、「ZOO・ZOO・ZOO」前に松永さんの長尺なソロ。ツェッペリンやクリムゾンを彷彿する! おお〜ロックバンドだ
・矢代さんが亡くなったことで方向転換を余儀なくされたという面もあるかも知れないが、勿論それだけでは済まさない。ライヴでの音作りに困り果ててた窪田さんが、昨年ゲストで来てくれたイマサと演奏して「ギター2本でやるのもありか」と気付かされ、今回サポートに米内山尚人さんを迎えたとのこと
・矢代さんが亡くなったのは2022年9月。翌年追悼ライヴを行い、イマサがゲストに来たのはその一年後。ここに辿り着く迄まるまる2年。そこから一年かけて今のサウンドになったということか
窪田:80年代に出した楽曲を今のバンド編成で、今の音響にするのがたいへん。これはウチに限らず当時の音づくりがそうだったんだと思う。CD持ってたら聴き比べてみて。全然違うから! サエキ:ずーっとやってましたもんね、あーでもないこーでもないって 窪田:竿(ギターやベースといった「竿物」のこと)だけでやれるのかって…… サエキ:竿! まあ男の人は皆1本は持ってますけどね(ここでこういうネタをかましてくるサエキさんウザい・笑) 窪田:まあひとりで夜中にカチャカチャやってるだけだけどね…… 松永:(窪田さんが)自由に泳がせてくれるから僕はそんなにたいへんではなかったです
・で、新譜のレコーディングにもそれは活かされたと
・ライヴでギターが2本あると窪田さんの負担も多少は軽減。とはいうものの曲毎のセッティングがたいへんで間が空く。足元見えなかったけどエフェクターもかなりあったのでは
・米内山さんがソロを弾く場面も結構あり、カッティングに専念する窪田さんを堪能出来た。いやーホント最高よね、このひとのカッティング……米内山さんはギターの他にもPCやシンセを担当し、貢献度高かったです
・メインギターはYAMAHAのPACIFICA。そうそう、1曲だけ(だったかな)テレキャスだったけどそれでカッティングはしないところが興味深いというか、窪田さんのカッティングってやっぱ独特よなあ。大好き♡
・リズム隊はのびのび、バンマスたいへん。特にバカボンは傍若無人。今回バカボンはスティックなしで、ベースはプレシジョン一本。これがえれえ迫力で。ディストーションのかかりっぷりがすごい。好きにやってましたね
・とはいうものの、リリパにつきライヴ初お披露目の曲も多く、既存の曲もアレンジが変わっているので緊張感があった。松永さんが「足攣ったんで薬服んでもいいですか」って。サエキ「漢方ですか、お水ありますか?(テキパキ)」
・あっ、それはツムラの68番だろう!(わかる)
・松永さんは指も切っちゃったみたいで、サエキ「絆創膏ありますか、液体絆創膏(品名いったけど忘れた)ありますよ(テキパキ)」松永「それしみるからやだ」サエキ「しみるから治るのが早いんですよ!(テキパキ)」松永「そうなの?」サエキ「あっ、絆創膏来たみたいですよ!(テキパキ)」。松永さんはいつでもいつもの松永さんだね……(にっこり)
・「TRON岬」や「青いキングダム」で、あのシンセの音が聴こえないことにはまだ慣れないけど脳内補完してる。矢代さん見守ってちょうだいね
・新譜『ぼくらはここにいる』のアートワークには矢代さんもいるのです
・来年40周年、バカボンが古希、という話からしみじみしだす
バカボン:ロックなんて30でやめるもんだと思ってたのに……福生のライヴハウス出てた頃、30でも未来を夢見てミュージシャン続けてるひとみてええ〜とか思ってたのに。でも俺パールでデビューしたとき30だったんだよね(笑) サエキ:僕ら(他のバンドで一度デビュー〜解散後にパール始めたから)デビュー遅かったですからね バカボン:俺らが生まれた頃の平均寿命、63(だったか?)歳だったんだよ! 50周年なんて80だよ。50周年出来るかな〜 ・出来ますように
・故人の話。「地上げ屋ストンプ」はホントは坂本龍一プロデュースでやる筈だったけど流れちゃったという話(楽曲には参加してますね)
・こういうときサエキさんのカラリとしたものいいには救われる。勿論悲しみも悼む気持ちもあるんだけど「ひとは死ぬ! 自分もいつか死ぬ! はい、自然の摂理!」みたいなカラリとしたところがあるのは理系のひとだからなのだろうか。しかし彼は詩人でもあり、誰にも書けない言葉を書けるひとでもある
・本当に不思議なバンドで、比べるものがないバンド。だからフォロワーといえる存在もない、唯一無二のバンドです
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setlist(ツチノタミさんのツイートより引用。シェア有難うございます!)
01. 世界はGO NEXT 02. 江戸時代の恋人達 03. 火の玉ボール 04. MAGネティック (バカボンベースソロ) 05. TRON岬 06. イノセントグレイ 07. 青いキングダム 08. 君と映画 09. タンポポの微笑み 10. です not DEATH 11. 色以下 12. 夜間押しボタン式 13. ぼくらはここにいる 14. ゴム男 (松永ドラムソロ) 15. ZOO • ZOO • ZOO 16. Get Wild feat. 小室哲哉 17. Self Control feat. 小室哲哉 18. RUN-NEW バックステージ feat. 小室哲哉 19. 快楽の季節 feat. 小室哲哉 encore 20. バカヤロウは愛の言葉
3時間超えだけど20曲か、話が長いんだな(笑)。いやいやお話楽しいしセッティング時間かかるし休み入れつつやらないとね!
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我乍らいい瞬間を撮ってた(動揺のあまりピント合ってないが)
[image or embed] — kai (@flower-lens.bsky.social) Nov 13, 2025 at 1:10
窪田さんと! 小室さんが! 寄り添っている!!! サエキさんが「撮影拡散オッケーです、バンド存続のために(宣伝)宜しくお願いします!」とかいってウケてたんだけど、そうよなちゃんと許可出さないと色々ややこしくなるのでしょう。普段洋楽とかインディーベースのとこばっか行ってるから我に返ったわ、この辺りはおおらかだからな。 --- 小室:サブカルチャー?(実際「?」がつくニュアンスで話してた)のひとたちとあまり交流ないので新鮮です サエキ:いやあ、メジャーな仕事もやっているんですが、そうですね、はい、サブカルですね! --- というやりとりには笑いました。
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| 2025年11月08日(土) ■ |
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| O.L.H.(Only Love Hurts a.k.a. 面影ラッキーホール)『みっつ数える前にあんたは・・・ ふたつめの夜』 |
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O.L.H.(Only Love Hurts a.k.a. 面影ラッキーホール)『みっつ数える前にあんたは・・・ ふたつめの夜』@WWW
O.L.H.(Only Love Hurts a.k.a. 面影ラッキーホール『みっつ数える前にあんたは・・・ ふたつめの夜』ひとつめの夜からホーンの入れ替わりがちょっとありましたが鉄壁のアンサブルでした。歌詞変えたあの歌は時世をしっかり見てるなあと感心もした。ただ見ている、見ているひとはいる。素晴らしい
[image or embed] — kai (@flower-lens.bsky.social) Nov 9, 2025 at 1:07
痛恨の日程勘違いでみっつめの夜に行けないのが悔やまれる〜全3回なのに! アッキーも皆も元気でいて〜!
P-VINEから出たアルバム3枚をリリース順にライヴでほぼ再現+αシリーズ。『Whydunit?』再現の『ひとつめの夜』に続き、『typical affair』再現。チケ完売! 満員! 普段は段差があって見やすいWWW、今回は段差に勝る高身長が前に群がっててあんま視界ない! なんとか隙間から拝見。音は最高。
『typical affair』は行くとこ迄行ったというか、情景描写これ極まれりといった感で茶化す隙すらない作品でした。「ゴムまり」が顕著。リリース時、それ迄面白がってたひとがサーッと引いていった。ここでふるいがかかった印象があります。有り得る現実をいかに虚構(=物語)として聴かせるか。アッキーとシナヤンの徹底したリサーチ力と突き放した表現手法が冴え渡っており、安全圏にいると呑気に思っていたリスナーを屠殺場に引きずり出すような作品です。聴く側も無傷ではいられない。
しかし「ただ見ている、ただただ見ている」「見ているひとは必ずどこかにいる(=あなたはひとりではない)」というポリシーは徹頭徹尾貫かれており、見事としかいいようがない。嘲笑でもない、冷笑でもない。改めてその詩作の技と着眼点に唸りっぱなしであった。今更いうことではないかも知れないが「あたしだけにかけて」の生死と精子、賭けてと掛けてのダブルミーニングなんて鋭いにも程が……もはや凄みすら感じる。と、真面目に書いてしまう。冒頭のツイートに書いた「歌詞変えたあの歌」は「ピロートークタガログ語」→「ピロートークニッポン語」。フィリピンの、というMCからつい数日前に明らかになった陰惨な事件を思い出し身構えるがそのことではなく、今や立場が逆になっている現在を的確に更新する。
で、ここ迄残った(?)リスナーも真摯なもので、「ゴムまり」で悪ふざけするひとはいない訳ですよ。皆が聴き入り、フロアが静まり返る。アッキーの表現力/ストーリーテラーっぷりに恐れ入る。よっ、千両役者。表現力といえば「セカンドのラブ」の中森明菜式歌唱が素晴らしく、聴き取れるギリギリのウィスパーっぷりが最高でした。ストーリーテラーとしては「ゆびきり」が秀逸。てか今回MCが冴えまくっていて、元カノとの思い出が次の曲紹介へと美しく(?)着地するという芸当も見せてくれました。終わったあと「うまい! と膝打ちそうになった」「落語か」「どこ迄がホントなのか」「息をするようにホラを吹くから」という話で盛り上がる。そのスジの方の黒田さん、実在するのかしら……。「SO-SO-I-DE」も聴けてうれしかった! あらゆる属性を隠さない、透明にしないコール&レスポンスにも胸がすく思い。
ホーンには『1996年の面影ラッキーホール』から再登場、中島カオリさんがいました。tsとfl。『ひとつめの夜』から参加のkey・伊藤隆博さんも、アッキー曰く「やめてません!」。よかったよかった。アッキーてなんだかんだいうても気遣いのひとですよね、というか意外と(失礼)ちゃんとした社会人。カオリさんがソロのときフロアを煽ったり、所属してたバンドを紹介したりさ。ゲストにもちゃんとリスペクトがある。
オーラスは恒例「東京(じゃ)ナイトクラブ(は)」。何度聴いても涙が出る。これも情景描写極まれりなんだけど、クラブシーンの刹那と愛情が詰まっている曲のように思える。そんなこといってもアッキーは「見たままとリサーチで書いただけ」っていいそうだけどね。3回のシリーズライヴが終わっても、ときどきライヴやってくれたらうれしいです! また会いたい!
フロントアクトは町あかりさん。バックトラックに合わせテクノ昭和歌謡を唄う達者な芸風で素敵。「12年前にも呼んでいただいて」と話しており、うーん観たっけか、どうだっけ……と思っていたのだが(すみません)、終盤「では『コテンパン』という曲を……」といわれてあ゛ーーーッとなる。こてんぱーんの歌だ!!!!! この歌定期的に頭の中で回るんだよ、今でも! もはや誰の歌だか忘れていた! それ程強度のある曲なんだよ、キャッチーで美メロで! 曲だけが残る、ある意味すごいことだ。
ナイロン100°Cの「なのなのいつでも生乾き〜♪」もそうなんだよ、洗濯物が乾かない季節になると定期的に回る。犬子さん(まだ漢字表記だった)と峯村さんが唄ったんだけど、どの作品の劇中歌だったかもはや思い出せない。
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| 2025年11月01日(土) ■ |
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| 『私を探さないで』 |
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M&OPlaysプロデュース『私を探さないで』@本多劇場
『シブヤから遠く離れて』から21年、遂に?勝地涼が岩松了作品で主演を…🎉 いいたかった言葉、いえなかった言葉を悉く成仏させる岩松術。緊張の続く会話で2時間がピンと保つ。感嘆のため息。『私を探さないで』
[image or embed] — kai (@flower-lens.bsky.social) Nov 1, 2025 at 22:19
このあと調べてみたら、勝地さんは2021年に『いのち知らず』で岩松作品の主演を務めておりました。これ見逃してるんだけど仲野大賀主演だと思ってた。勝地さんの事務所のHP見たらわざわざ「主演」て書いてあった。ご、ごめ……失礼しました!
結婚の報告のため、故郷の離島へ一時帰省した主人公。「17歳の男の子」だった彼は、再会した高校時代の同級生、担任教師との会話を通じ、失踪した女子生徒のことを思い出す。かつて彼女と主人公はのっぴきならない関係にあり、同様に主人公と担任教師との関係も微妙なものだった。教師は作家へと転身し、島で、学校で起こった出来事をモチーフにした小説はベストセラーとなる。そのことが地元を華やがせているようだが、かつての生徒たちは自分たちのことが小説に書かれていることを手放しで喜んではいない。
今回はインスパイア元としてスティーヴン・ミルハウザーの短編小説「イレーン・コールマンの失踪」が挙げられている(未読。読んでみたい!)。とはいうものの、不穏な台詞のやりとりは岩松節としかいいようがないくらいの精錬ぶり。なんでこんなにイライラするのに引き込まれてしまうのだろう。このひとの書く会話に魅せられている。取り憑かれている、といった方が合っているかもしれない。あ゛ーームカつくーーー! と思っていると「ポケットのなかにいるのは私でしょう?」なんて宝石のような言葉をブッ込んでくる。憎しみすら覚える(笑顔で)。
具象が少ない舞台(美術:愛甲悦子)、というのは岩松作品には珍しい。階段はなく、堤防がある。しかしそれは具象ではなく、見えない「向こう側」を観客に意識させる。向こう側にある海、向こう側にいる人物、向こう側にある生活。岩松作品の象徴でもある水はその最大値である海になり、それも姿を現さない。失踪した女子生徒は鮮やかなブルーの小物を身につけている(衣裳:伊賀大介)。服装が変わっても、必ず青がそこにある。ミステリアスでもあり、清潔でもあり、海のような昏さもある青。女子生徒を演じる河合優実によく似合う。
岩松さんが演じる、双子とはいわないがそっくりな兄弟の違いを衣裳ひとつで見せていたのも見事だった。見た目だけでなく、そのひととなりも感じとれてしまうのだ。小綺麗で統一感のある服を着た兄、トレーニングウェアの上はadidas、下はPUMAという、いかにも頓着がない弟。そのひととなりが透けて見えるようだった。小泉今日子演じる教師の、ドレープの効いたスーツも素敵。
被害者でいたい人物、加害者の方がマシだと思う人物、被害者と加害者を生んでしまったかもしれない人物。失踪した女子生徒への追憶を辿っても答えは出ない。正解もない。しかし目が、耳が舞台に釘付けになり続ける2時間。ずっとモヤモヤしている裏で、心はずっと高揚している。胸踊るような舞台だった。
岩松さんと蜷川幸雄の初タッグである『シブヤから遠く離れて』は、舞台というものの刹那と永遠を見せてくれた。ふたりはその後何作もタッグを組んだ。本人たちにとっても大きな出会いだったのだろう、蜷川さんの没後も岩松さんはゴールド/ネクストシアターの面倒を見てくれた。その結晶ともいえる『薄い桃色のかたまり』、『雨花のけもの』は、忘れ難い美しい作品となった。舞台なので、その痕跡は関わった/目撃した者の心のなかにしかない。
『シブヤ〜』初演時、蜷川さんに徹底的にシゴかれたのが勝地さん(と蒼井優)。かなりペシャンコにされたそうだが、どちらにも手応えがあったのだろう、ここから勝地さんは何作も蜷川演出作品に参加する。しかし岩松作品に勝地さんが出る機会はなかなか訪れなかった。調べてみると、再会は2019年(『空ばかり見ていた』)のようだ。随分時間がかかった。果たして勝地さんは、岩松さんの書く美しい言葉を消化+昇華する力をつけていた。自身のものとして血肉化しないと、あの台詞群をああは語れないものだ。それは理解とは別物だ。他者に振り回される男が発する、迷い、惑い、抵抗と諦観の言葉の数々。
個人的には蜷川さんの追憶とともに今作を観てしまったようなところもある。というか、岩松さんの作品を観る度、いや、どの劇作家の作品でも、「蜷川さんならどう演出するかな」と思ってしまう。これはもう病に近い。少しの罪悪感と、それでもいいという開き直り。『シブヤ〜』のマリーも、『私を探さないで』の晶も、追憶のなかに生きる岩松作品の女性たちは、それでもいいといってくれるだろうか。
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・岩松了が“具体的な美術ではなく抽象に挑戦した”「私を探さないで」幕開け┃ステージナタリー この舞台に関われて幸福ですが、観客として観たい!と願うも、それは叶わぬ夢。 みなさま、どうか私の目となり耳となりこのお芝居を存分に楽しんでください。 小泉さんのコメントが素敵。舞台を観ることが出来るのは観客だけなのだ
・もう一度観たいあの舞台 Vol.3 杉原邦生・北尾亘が10年を振り返る┃ステージナタリー そこに〈演出家の不在〉を感じなかったことへの衝撃が大きい。〈演出〉という仕事は具体的に目撃したものや体感したものの印象が残りやすいけれど、実は、作品を満たし、上演中に流れているもの、あえて言葉にするならば〈空気〉のようなものにこそ、演出家の作家性が現れるのではないかと思っている。だからこそ、演出家の鼓動と息吹が消え、遺された作品やその上演から僕たちは、否が応でも演出家の〈不在〉を感じ取ってしまうのだと思う。では、なぜ蜷川さん亡き後に上演されたあの「海辺のカフカ」では〈不在〉を感じなかったのか。 とても好きな作品だけれど、「もう観られなくて良い。観られないから良い。」と思っている自分もいる。それが舞台の良いところだから。 おまけ。この連載、とてもいい企画だなー。杉原さんは『海辺のカフカ』を挙げている。 私も「もう観られない」ことが舞台の素晴らしさだと思っている/思いたいけれど、蜷川さんの作品に関してはまだその境地には至れない。今でもずっと、蜷川さんの舞台を観たいと思っているし、観られなくなったことに打ちのめされている
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