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2025年11月23日(日) ■
K-BOOKフェスティバル 2025 in Japan『空と風と星の詩人〜尹東柱の生涯〜』
K-BOOKフェスティバル 2025 in Japan『空と風と星の詩人〜尹東柱の生涯〜』@神保町シアター「外タレ枠はいつ来るか分からんのは10代のころから重々わかってます。行きたいときに行かないと!楽しんできて」と送り出してくれた友人のおかげでリスケ出来ました有難う有難う パク・ジョンミンssiに会えました 『空と風と星の詩人〜尹東柱の生涯〜』上映&トークイベント #kbookfes[image or embed]
— kai (@flower-lens.bsky.social ) Nov 23, 2025 at 20:01 マリス師有難う有難う(どげざ)!!! 10月10日に、こんなお知らせが流れてきました。 パク・ジョンミン? あのパク・ジョンミン? いやいや同姓同名だろう、韓国は苗字の種類が少ないこともあり同姓同名が結構いるらしいし。ファン・ジョンミンという役者もふたりいることだし。上映会に来るひとも、きっと尹東柱の本を出している出版社の方だよね……などとツイートしていたら、のぞこさんから「同一人物です!」と教えて頂き (有難うございます!)大慌て。体調不良につき飛行機に乗れない今、来てくれる機会を逃す手はないんだよ〜! その後こんな記事が新聞に載る。クオン/チェッコリの金承福さんによるコラム。・「疎外されたもの」たちのために 出版社立ち上げた韓国の俳優┃モジモジ? Kカルチャー そうだったのか……寡聞にして存じ上げず。ということは、12月からの舞台『ライフ・オブ・パイ』が役者カムバになるのか? その稽古も大詰めだろう時期に来てくれるとは。映画の舞台挨拶で日本に来てくれないかなーと思ってはいたが、こんな形で実現するとは……。出版社の代表として、『空と風と星の詩人』の出演者として、そして文学を愛する者として。公式初来日です。クオンさん有難う〜! 今回有難うばっかりいっている。 『空と風と星の詩人』は、実在した詩人・尹東柱(ユン・ドンジュ。一発変換出来る)の物語。韓国カルチャーに触れるようになってから比較的早い時期にこの作品のことは知りましたが、鑑賞の機会に恵まれず、先に唯一の詩集『空と風と星と詩』の邦訳を読んでいました。ようやく観ることが出来た。今作でジョンミンさんは、尹東柱の従兄弟で、共に日本へ留学し、共に投獄され亡くなった宋夢奎(ソン・モンギュ)を演じています。 上映前にトークイベント「宋夢奎を演じてみて」が開催されました。以下おぼえがき。記憶で起こしているのでそのままではありません。話が前後した箇所はひとつにまとめています。ご了承ください。 -----・はっきりとは憶えていないのですが、こうして日本のお客さんを前に話すことは初めてだと思います。外国で知られている程有名な俳優ではないのに、こうして呼んで頂いて有難うございます。チケットが売れたので、来ない訳にはいかないと ・帰りの飛行機を28日で取っていたことに気付き、チケットを取り直したりもしていました。28日迄いてもいいかなと思ったのですが、そういう訳にもいかず……28日にまた来て帰ろうかなとも思いました 飛行機が遅れて空港に着いたのが12時、会場入りしたのが14時(MUZEブースに普通にいてサインやら撮影やら応えてくれたそう。居合わせたひとラッキー!)、15時半から30分トークをしてすぐ空港というハードスケジュールだったそうです。ヒィー・(『空と風と星の詩人』出演の経緯)台本を渡されて興味を持ち、「尹東柱を演じたい」といったら監督に「それはダメ」といわれ……オーディションを受けて宋夢奎役が決まりました ・(役作りについて)宋夢奎は資料が殆ど残っていないんです。なので尹東柱の資料から調べていって、数少ない情報から人物像を想像するしかなかった。少しでも宋夢奎が過ごした場所、見た風景を知りたくて、東京の立教大学に行きました。宋夢奎の留学先じゃないのに。キャンパスを歩いて、校舎に入ろうとしたら警備員さんに止められました。去り難く、門の近くに宋夢奎への手紙を書いて埋めました。宋夢奎の留学先じゃないのに。今もあるかもしれません ・そして、立教大のキャンパスの門前で、(尹東柱と宋夢奎が暮らした)中国の村(明東?)を訪れてみようと思いつきました。でも丁度そのとき春節だったんです。飛行機のエコノミークラスは満席、ホテルも全部満室でした。人生で初めてビジネスクラスに乗り、スイートルームに泊まりました。映画の出演料より高くついたと思います。ここ迄役を追求したのは若かったからでしょうか、もうあんな情熱は持てないかもしれません 立教大に留学したのは尹東柱。宋夢奎は京都帝大。埋めてるとここそ警備員さんに止められそうだが大丈夫だったのね……・(主演作『얼굴(顔)』について)日本で公開が決まってうれしいです。(今作の監督)ヨン・サンホ監督が、日本で自分の映画が公開されると、“新感染”ってタイトル(邦題)がつくので、今度も“新感染”がつくのかな〜といっていました。ゾンビ出てないのに。『新感染 枠』とかになったりして(韓国語で「얼굴=顔」には「枠」という意味もある(?)そうです)。日本の配給の方も今日来ているので、提案しておきます。どうですか、『新 感染 枠』 日本の配給会社はツイン。『부산행(釜山行き)』に『新 感染 ファイナル・エクスプレス』)とつけた前科があります。続編はGAGAの配給だったけど、前作にツインが「新 感染」ってつけちゃったから『반도(半島)』→『新 感染半島 ファイナル・ステージ』になっちゃったんだよなー(根にもつ)! 『불한당(不汗党)』→『名もなき野良犬の輪舞(ロンド)』ってのもあったな…なんなの……。冗談ぽく話してたけど含みを感じたわ。今度は絶対変な邦題付けないでくれよ・6日後に開幕の『ライフ・オブ・パイ』は、演劇でもミュージカルでもなくライヴインシアター。「ライヴインシアター」といえ、といわれています(笑)。たいへんな舞台で、このひとは死んでしまうかもしれないと観客に思われてしまうかもしれないくらい一生懸命やっています。僕だけでなく、この作品に関わっている皆も、よいものを作ろうとしています ・観てください、といいたいけれど、遠く迄わざわざ観に来てとはいえないですね。僕がひとりでただ思っているだけで、実現するかは別ですが、『ライフ・オブ・パイ』を日本に持っていければ、上演出来ればいいのになと願っています 実現してほしい(泣)体調よければ現地に観に行ってたよおおお・韓国でいつも来てくれる人がここにも来てる。こんな遠い、外国に迄……どこ迄来てくれるんだろう。ちょっとずつ遠くに行って、どこ迄来てくれるか試してみようかな 観客席を見渡して真顔で驚いていた。このイヴェントはPeatixのみの発売だったけど、そのシステムもちゃんと調べて登録してチケットをとったんですね。すごい! このあと客席との写真撮影があったんだけど、そのファンの近くに行って一緒に写真に納まっておりました。ファン思い ----- 貴重な話が沢山聞けたわ……とても穏やかで聡明、という印象。ふらっと来てふらっと帰る佇まい。表情をあまり変えず、感情をあまり表に出さず、淡々と話す。冗談も真顔でいう。読めば伝わると思うが、すごく謙虚。ときどきそれを通り越して自虐的な印象すら持った。くれぐれもお身体おだいじに……。 この日は主に映画の話でしたが、フェス初日に公開された映像インタヴューでは、映画のこと、出版業と俳優業の両立について、読書が演技をする上でどのように役立つかなどなど、じっくりお話しています。アーカイヴうれしい。・事前収録Interview|初めまして、出版社MUZEの代表パク・ジョンミンです 무제 출판사 박정민대표 특별 인터뷰 VIDEO うーむ、やはりクレバー。心身ともにおだいじに(再)。 ----- さて『空と風と星の詩人〜尹東柱の生涯〜』本編。原題『동주(ドンジュ)』、英題『DONGJU;The Portrait of A Poet』、2016年、イ・ジュニク監督作品。『金子文子と朴烈』 の監督でもあります。 日帝の蛮行が描かれている作品のせいか、日本での公開は映画祭や小規模上映会のみだったようです。日本語の資料には、尹東柱と宋夢奎は「獄死した」と書かれている。金子文子もそうだったけれど、「何故、どうして」獄死したのかの詳述がない。それが何を意味するか……少ない証言からわかったことは、ふたりとも拷問、人体実験により衰弱死したということ。いくら隠そうとしても、なかったことには出来ないことだ。 作中で宋夢奎は明確な革命と独立の意志を持っていた。尹東柱は彼に憧れていたが、工作活動は行なっていない。創氏改名を強いられ、母語を話すことも書くことも禁じられた。それでも彼は母語で詩を残したかった、詩への情熱は消えなかった──。純粋な言葉を紡いだというだけで、宋夢奎と関わりがあったというだけで、彼は逮捕され投獄された。 全編モノクロームの映像。そのことが、作中の出来事を二度とあってはならない過去のことにしたい、その上で忘れてはならない、と示しているようにも感じる。加害者側の国に生まれた者として、後ろめたい、申し訳ない気持ちになる。少しの救いは、こんな時代にも、彼らに寄り添うひとが日本にいたということ。その詩に感銘を受け、出版に尽力したひとがいたこと。 恐ろしいのは、この映画で描かれていることが過去のことだといいきれなくなってきていることだ。今、日本はあの時代に逆行してはいないか。宋夢奎の「悔しさ」は、また繰り返されるのだろうか。そんなことはあってはならない。尹東柱を支援した大学教授とその教え子の側にいたい。 ジョンミンさんの演技は素晴らしかった。トークが上映前でよかったとも思った。K-BOOKフェスティバル 2025のテーマは「まじわる」。極端な話、この役を演じてなお、ジョンミンさんが日本と交流を持つ意志を示してくれたことに感謝する思いだった。 ---・『空と風と星の詩人〜尹東柱の生涯〜』┃ 日本のサイト残ってた・輝国山人の韓国映画 空と風と星の詩人〜尹東柱(ユン・ドンジュ)の生涯〜 いつもお世話になっております。エンドロールで流れる尹東柱と宋夢奎の年表の訳が全部載っている! 有難い! 情報量が多いのでほんのちょっとしか字幕つかなかったんだよー! キム・イヌが今作でも日本人役(尹東柱を尋問する刑事)。『暗殺』 、『お嬢さん』 、『金子文子と朴烈』、『工作』 ……観たものだけでもこれだけ日本人役で出てる。日本語を綺麗に話す方だからでしょう。『輝国山人の韓国映画』は役者のプロフィールも紹介されているのですが(韓国のタレント名鑑といっていい充実ぶり。いつもお世話になっております(再))、それによると在日3世(国籍は韓国)なのだそうです。『金子文子と朴烈』の文子役が素晴らしかったチェ・ヒソも、尹東柱の詩集を出版しようと奔走する日本人女性を演じていました。 観た限りだけど、韓国映画っていわゆる抗日作品でも「寄り添う日本人がいた」ということを零さず描いているものが多い。救われる思いでもある (20251201追記)・パク・ジョンミン来日、ユーモア全開で俳優人生の転機語る 来年公開作の邦題も提案┃映画ナタリー 詳細レポ出た。『新感染 顔』、本気にされたら困る。ツインさん絶対つけないでよ!
2025年11月22日(土) ■
『吉例顔見世大歌舞伎』夜の部
『吉例顔見世大歌舞伎』夜の部@歌舞伎座こんな四の切初めて観た…(それはそう)白鸚丈に当て書きされた役柄が胸に迫った 三谷かぶき『歌舞伎絶対続魂』(ショウ・マスト・ゴー・オン)[image or embed]
— kai (@flower-lens.bsky.social ) Nov 23, 2025 at 1:22 源九郎狐が2匹(何気に一緒にくるくる回ってた骨つぎ入れたら3匹・笑)いるんですもん。笑うし。■『當年祝春駒(あたるとしいわうはるこま)』 曲がめちゃめちゃ格好いい! 囃子方の映える華やかな演目。曽我兄弟の橋之助、玉太郎が粋よく息のあった踊りを見せてくれました。■三谷かぶき『歌舞伎絶対続魂』(ショウ・マスト・ゴー・オン)幕を閉めるな 三谷幸喜作演出による歌舞伎版『ショウ・マスト・ゴー・オン』。オリジナルは「幕を降ろすな」で、今回は「幕を閉めるな」なんですね。『義経千本桜』を最後迄演じきれるか!? にしても、エラいドタバタになってた……(笑)。稽古でアドリブが次から次へと出てくるので三谷さんが「ここらで止めないと」と思った、と連載で書いてましたが、それがよくわかるサービスぶりでした。幸四郎丈も獅童丈も自由過ぎる。そう見える。それでも最後は持ってかれる。流石です。 許可なき演目のパクり、舞台装置の故障、役者のわがまま……次から次へと起こる難題に幸四郎さんはずっとキエーーーーーてなってるんですが、「役者に見切りをつけて狂言作者になった」という複雑な心境が滲んで味わい深い。獅童さんも、行くとこ行くとこでトラブルを起こし続けて「田舎芝居」に流れ着いた後ろめたさがじんわり。愛之助丈の座元もいい加減(かなり・笑)そうでいて「田舎芝居」矜持を持っているのが伝わる。 染五郎丈は美形の義経役者とブサイク(…)の狂言作者見習の二役。何度も入れ替わるのでたいへん。登場時、客席から「ザッ」と音がしそうなくらいオペラグラスが上がってましたが、直後そよっとしたどよめきが起きましたよね。狂言作者見習の顔(メイク)だったので。どんな顔だったかは先日の『情熱大陸』でも出てましたし、検索すれば出てくると思います。父子の罵り合いもあり、役柄=役者として観られる面白みがあるのは歌舞伎ならでは。 特筆すべきは新悟丈! 男性(本人)が女性の役(油屋遊女お久)を演じ、その女性(お久)は(作中の舞台で)男性を演じる……というこんがらがりそうな役柄でした。これがまあ笑えて笑えて。達者だしかわいいし、贔屓としてはうれしい限り。彌十郎丈も迫力ある(笑)静御前でした。彌十郎さんが女形をやると、つい勘三郎丈との『身替座禅』を思い出してしまって、笑いつつもほろりとしてしまう。 そしてそう、白鸚丈。役がなくなったことを知ってか知らずか、ずっと出番を待っている老役者。その日の出番がなくなっても、明日はきっとある。だから稽古を怠らない……短い出番でしたが、その姿に涙した。 浅野和之(おじいちゃん!)も阿南健治(気風のよさ!)もいい仕事。てか浅野さんの扱いは色々勿体ない気もしたが、もはや狐の一部だったあの場面には拍手喝采。歌舞伎の常連客の皆さんにももう認知があるでしょうし、安心と信頼の浅野さんでした。 階段から現れ、海老反り、欄干渡り、といった「四の切」の見どころはしっかり見せてくれて(といっていいのか?)楽しかった。そして澤瀉屋の「四の切」、四代目の源九郎狐をいつかまた観たいなあ……などと思ってしまうのだった。叶わぬ夢とは知りつつも。 ----- 二日後、片岡亀蔵丈の訃報。どうしてこんなことが亀蔵さんに起こるのだろうと、今でも信じられないし、信じたくない。こんなときでも喜劇を演じねばならない一座の心中はいかばかりか。『歌舞伎絶対続魂』(ショウ・マスト・ゴー・オン)というタイトルに苦い思い。
2025年11月12日(水) ■
『ぼくらはここにいる パール兄弟2025』
『ぼくらはここにいる パール兄弟2025』@Shibuya CLUB QUATTROオリジナルギタリスト(って呼称あるのか)による「Self Control」と「Get Wild」が聴ける日が来るとは〜レコーディングにまつわる貴重な話も沢山聞けた〜 #パール兄弟 #小室哲哉[image or embed]
— kai (@flower-lens.bsky.social ) Nov 13, 2025 at 0:59 ----- パール兄弟(Vo:サエキけんぞう、G:窪田晴男、B:バカボン鈴木、Drs:松永俊弥) Support G、PC etc.:米内山尚人 Guest Key:小室哲哉 ----- 新譜『ぼくらはここにいる』リリパ、かつ来年の40周年(!)を渋公で迎えようプロモーション。なんですが、今回の目玉はなんといっても小室さんがゲストというところでしょう。ビックリした! クアトロで小室さん観られるとかすごくないか。TM Networkの「Self Control」「Get Wild」のギターを窪田さんが弾いているという縁から今回の企画が出たようです。サエキさん曰く「小室さんが『恩返しがしたい』って。あのひと『あのときはお世話になりました』『恩返しがしたい』が口癖ですよねもう」「すごい腰の低いいい方ですよ!」。またそういういい方する〜。 これなー、個人的には長年モヤモヤしてた案件だったのです。わたくしTM Networkは5枚目のアルバム『humansystem』迄はガッツリ聴いていて、人生で初めて買ったCDは『Gift for Fanks』な人間なんですよ。東海ラジオの『SF Rock Station』も毎週聴いてたんですよ。小室さんがプロデュース業で大大大ブレイクし、TKと呼ばれ出した辺りから遠ざかってしまいましたが。あ、でもGlobeはデビュー当時観たな…これ教授も出てたし…… 。 で、リリース当時「Self Control」のギターは窪田さんだとちゃんと名前が出ていたんですね。「贔屓と贔屓が共演!」(当時は推しという言葉などない)とか喜んでた訳です。ところが「Get Wild」はどこを探しても演奏者のクレジットが見つからない。「あの音は絶対窪田さんだろ? 何で名前出さないの? 大人の事情でもあるの!?」とずーーーーーっとモヤモヤしてたんですよね……。そのうち松本孝弘だという噂だけが大きくなり。当時TMに関わっていた主なギタリストといえば松本さんと北島健二で、音からして北島さんではないだろうと。いやいやいや窪田さんでしょ! とずっと根に持っていたのです。我乍ら執念深い。・小室哲哉「Get Wild」を語る(2017年)┃サンレコ ・アニメ×音楽の常識を変えたTM NETWORKと「シティーハンター」のコラボ<後編>(2019年)┃Cocotame 窪田さんの名前が出だしたのはここ10年てとこでしょうか。・【実話】「Get Wild」のギタリストがアスファルトタイヤを切りつける音に敏感だった話(2021年)┃ロケットニュース24 おまけ、今回検索していて見つけた。こんな記事あったのか(笑)。 まあ当時は小室さんも忙しかっただろうし、数年後はもっと忙しくなるし、その後色々ありましたし、窪田さんは窪田さんでスタジオミュージシャンとして弾いた楽曲は1000曲はくだらないようなひとなので、お互い細かいところは憶えていないようでした。以下その経緯などをメモ。記憶で書いているのでそのままではありません。話が前後していたところもまとめちゃってます。サエキさんに倣い「Self Control」=「セ」、「Get Wild」=「ゲ」で表記します。 --- 窪田:(いちばん最初の接点は)おニャン子クラブに小室さんが楽曲提供して、そのギターを僕が弾いたんですよ。業界用語でインペグ屋と呼ばれているスタジオミュージシャンの紹介所から、「このスタジオに○日の○時に来てください」といわれて。 サエキ:とっぱらいでギャラが出るんですよねー。 窪田:「セ」もインペグ屋さんの紹介で。再会して「ああ、あのときはどうもどうも」とかいって。スタジオに入ったときまだ小室さんは来ていなくて、譜面渡されて「適当に好きにやっててくださーい」とか(ディレクターに?)いわれてカチャカチャやってたら……。 小室:僕が着いたときにはほぼ出来てましたよね(リフとかフレーズのアイディアのこと?)。テイクもそんなに重ねなかった、3〜4回ってところじゃなかったかな。あの「チャカチャーン」が僕らを救ってくれました。窪田さんのおかげです。 サエキ:何をおっしゃる! 小室:いや、ほんとに。僕らepicに所属していたんですけど、アルバム3枚出してもヒットが出なくて、次がダメならもう契約切られるってところで。崖っぷちだったんです。 サエキ:崖っぷち! 『カイジ』でいうと鉄骨渡りですね! 小室:『鬼滅の刃』で言うと無限城の底の底の奈落ですね。 (喩えの違いに笑いが) 小室:あの「チャカチャーン」は「チャカ」と「チャーン」を別々に録ってるんです。音を左右に……3時と9時の方向っていうんですけど。移動させて鳴らしたかったので。あのときは「セ」をシングルにするかも決まってなかったんです。結果ヒットして「ゲ」に繋がりました。 窪田:今はいっぺんに録ったあと編集出来ますけどね、コンピュータで波形とか見られない時代でしたから……。当時のデジタルサウンドでの音づくりは、TMとTo Be Continuedが頭抜けてました。 (そうなんだー!(窪田さんのいうことは大概鵜呑みにする)) サエキ:1986年ですね! その頃私たちは『鉄カブトの女』をやってました!(ウケる) 小室:今日はチャカチャーンはやってくれないの? 窪田:やー、ライヴでやるのは難しくて……(笑)ギター一本で音を振るのは。違うアレンジにしました。 (これがまたえれえ格好よくてな! いいもの聴けた) 小室:「ゲ」のギターもね、あれを弾けるのは窪田さんしかいませんね。4つの音階を16分音符で。 (アレな!) 窪田:いや、そんなことは……(謙遜)。 --- サエキ:まっちゃんはね、渡辺美里さんとずっとやってるもんね。 松永:9日で僕最後だったんですよ(ツアーのこと?)。 小室:僕の話出ました? 松永:はい。『eyes』とか『ribbon』の完全再現とかもやってるんですよ。皆でわいわいどうやろうかって相談して作っていて。楽しかったです。 --- バカボン:僕もインペグ屋さんからの紹介で、面と向かっては会わないままじゃなかったかな? 曲名もまだない、誰が唄うのかも知らない状態で、「Ring M-1」みたいな仮題が書いてある譜面だけ渡されて。こっちもギャラがもらえればいいやって感じで弾いて帰って、完成したものも知らないままで。 小室:台湾のアーティストですね。結構売れたんですよ。 バカボン:そのあと『リング』って映画が大ヒットしたのよ。あの怖いやつ。「えっ、これってあのときの……!?」ってしばらく思ってた時期があった(笑)。(アーティストの)Ringって知ったのはかなり後になってからでした。 サエキ:私はEUROGROOVEで英詞を書かせていただきました! その節は有難うございました! --- という訳で全員と接点あったんですね、窪田さんと松永さんのことしか存じ上げませんでした。こういう企画があると俄然サエキさんが張り切って、あれもいわなきゃこれもいわなきゃって感じで喋りまくってものすごい勢いで片付けようとするので、小室さんに失礼はなかったかと心配になる。段取り魔ですからね……全部やろうとするから逆にやっつけ仕事みたいに見えちゃうんだよ。今になって気付いたがサエキさん「何いってんの(早口)」が口癖だな。 小室さんがテキパキとセッティングしてるときも、窪田さんは「いや〜、見てて惚れ惚れするよね。料理人みたい」とかいってたんだけど、サエキさんはまだですかみたいなこというし。なんか手弾き分とループに乗せる分のパターンをつくってたみたいで(あとアナログシンセのあたためみたいなことやってた)、「延々やっちゃうんで始めちゃってください」とか小室さんが答えたら「はいっ、それじゃやりましょう!」みたいな受け答えでな。そこ迄詰め込んでも終わってみれば3時間。濃かったわ……。 共演曲は「セ」と「ゲ」、それだけかと思っていたら、レコーディングにも参加した『ぼくらはここにいる』から「RUN-NEW バックステージ」、そして「快楽の季節」にも参加してくれた。演奏に夢中なシンセ小僧(少年といいなさいよ)っぷり、プログレ大好きなのが伝わる。いいもの観た……。そうそう、サエキさんの声がところどころ宇都宮さんに似ててビックリした。「アスファルト〜」のタンギングとかそっくり! 寄せて唄ってたのかも知れないけど新しい発見。 衣装も合わせてくれて有難い話です。ひとりだけリボンタイしてたところがアクセントでしたね、似合ってた。これに懲りずにまた機会がありましたら宜しくお願いします……。 ----- ゲストがゲストなのでその話に終始しそうになるが、パール本体の話もちゃんと書き残しておきたい。バンドにとって結構重要なライヴだった。以下おぼえがき。 ・アレンジ変更に伴い骨太な演奏が増えた。「TRON岬」前にバカボン、「ZOO・ZOO・ZOO」前に松永さんの長尺なソロ。ツェッペリンやクリムゾンを彷彿する! おお〜ロックバンドだ ・矢代さんが亡くなったことで方向転換を余儀なくされたという面もあるかも知れないが、勿論それだけでは済まさない。ライヴでの音作りに困り果ててた窪田さんが、昨年ゲストで来てくれたイマサと演奏して「ギター2本でやるのもありか」と気付かされ、今回サポートに米内山尚人さんを迎えたとのこと ・矢代さんが亡くなったのは2022年9月。翌年追悼ライヴ を行い、イマサがゲストに来たのはその一年後 。ここに辿り着く迄まるまる2年。そこから一年かけて今のサウンドになったということか 窪田:80年代に出した楽曲を今のバンド編成で、今の音響にするのがたいへん。これはウチに限らず当時の音づくりがそうだったんだと思う。CD持ってたら聴き比べてみて。全然違うから! サエキ:ずーっとやってましたもんね、あーでもないこーでもないって 窪田:竿(ギターやベースといった「竿物」のこと)だけでやれるのかって…… サエキ:竿! まあ男の人は皆1本は持ってますけどね(ここでこういうネタをかましてくるサエキさんウザい・笑) 窪田:まあひとりで夜中にカチャカチャやってるだけだけどね…… 松永:(窪田さんが)自由に泳がせてくれるから僕はそんなにたいへんではなかったです ・で、新譜のレコーディングにもそれは活かされたと ・ライヴでギターが2本あると窪田さんの負担も多少は軽減。とはいうものの曲毎のセッティングがたいへんで間が空く。足元見えなかったけどエフェクターもかなりあったのでは ・米内山さんがソロを弾く場面も結構あり、カッティングに専念する窪田さんを堪能出来た。いやーホント最高よね、このひとのカッティング……米内山さんはギターの他にもPCやシンセを担当し、貢献度高かったです ・メインギターはYAMAHAのPACIFICA。そうそう、1曲だけ(だったかな)テレキャスだったけどそれでカッティングはしないところが興味深いというか、窪田さんのカッティングってやっぱ独特よなあ。大好き♡ ・リズム隊はのびのび、バンマスたいへん。特にバカボンは傍若無人。今回バカボンはスティックなしで、ベースはプレシジョン一本。これがえれえ迫力で。ディストーションのかかりっぷりがすごい。好きにやってましたね ・とはいうものの、リリパにつきライヴ初お披露目の曲も多く、既存の曲もアレンジが変わっているので緊張感があった。松永さんが「足攣ったんで薬服んでもいいですか」って。サエキ「漢方ですか、お水ありますか?(テキパキ)」 ・あっ、それはツムラの68番だろう!(わかる) ・松永さんは指も切っちゃったみたいで、サエキ「絆創膏ありますか、液体絆創膏(品名いったけど忘れた)ありますよ(テキパキ)」松永「それしみるからやだ」サエキ「しみるから治るのが早いんですよ!(テキパキ)」松永「そうなの?」サエキ「あっ、絆創膏来たみたいですよ!(テキパキ)」。松永さんはいつでもいつもの松永さんだね……(にっこり) ・「TRON岬」や「青いキングダム」で、あのシンセの音が聴こえないことにはまだ慣れないけど脳内補完してる。矢代さん見守ってちょうだいね ・新譜『ぼくらはここにいる』のアートワークには矢代さんもいるのです ・来年40周年、バカボンが古希、という話からしみじみしだす バカボン:ロックなんて30でやめるもんだと思ってたのに……福生のライヴハウス出てた頃、30でも未来を夢見てミュージシャン続けてるひとみてええ〜とか思ってたのに。でも俺パールでデビューしたとき30だったんだよね(笑) サエキ:僕ら(他のバンドで一度デビュー〜解散後にパール始めたから)デビュー遅かったですからね バカボン:俺らが生まれた頃の平均寿命、63(だったか?)歳だったんだよ! 50周年なんて80だよ。50周年出来るかな〜 ・出来ますように ・故人の話。「地上げ屋ストンプ」はホントは坂本龍一プロデュースでやる筈だったけど流れちゃったという話(楽曲には参加してますね) ・こういうときサエキさんのカラリとしたものいいには救われる。勿論悲しみも悼む気持ちもあるんだけど「ひとは死ぬ! 自分もいつか死ぬ! はい、自然の摂理!」みたいなカラリとしたところがあるのは理系のひとだからなのだろうか。しかし彼は詩人でもあり、誰にも書けない言葉を書けるひとでもある ・本当に不思議なバンドで、比べるものがないバンド。だからフォロワーといえる存在もない、唯一無二のバンドです ----- setlist(ツチノタミさんのツイート より引用。シェア有難うございます!) 01. 世界はGO NEXT 02. 江戸時代の恋人達 03. 火の玉ボール 04. MAGネティック (バカボンベースソロ) 05. TRON岬 06. イノセントグレイ 07. 青いキングダム 08. 君と映画 09. タンポポの微笑み 10. です not DEATH 11. 色以下 12. 夜間押しボタン式 13. ぼくらはここにいる 14. ゴム男 (松永ドラムソロ) 15. ZOO • ZOO • ZOO 16. Get Wild feat. 小室哲哉 17. Self Control feat. 小室哲哉 18. RUN-NEW バックステージ feat. 小室哲哉 19. 快楽の季節 feat. 小室哲哉 encore 20. バカヤロウは愛の言葉 3時間超えだけど20曲か、話が長いんだな(笑)。いやいやお話楽しいしセッティング時間かかるし休み入れつつやらないとね! -----我乍らいい瞬間を撮ってた(動揺のあまりピント合ってないが)[image or embed]
— kai (@flower-lens.bsky.social ) Nov 13, 2025 at 1:10 窪田さんと! 小室さんが! 寄り添っている!!! サエキさんが「撮影拡散オッケーです、バンド存続のために(宣伝)宜しくお願いします!」とかいってウケてたんだけど、そうよなちゃんと許可出さないと色々ややこしくなるのでしょう。普段洋楽とかインディーベースのとこばっか行ってるから我に返ったわ、この辺りはおおらかだからな。 --- 小室:サブカルチャー?(実際「?」がつくニュアンスで話してた)のひとたちとあまり交流ないので新鮮です サエキ:いやあ、メジャーな仕事もやっているんですが、そうですね、はい、サブカルですね! --- というやりとりには笑いました。
2025年11月08日(土) ■
O.L.H.(Only Love Hurts a.k.a. 面影ラッキーホール)『みっつ数える前にあんたは・・・ ふたつめの夜』
O.L.H.(Only Love Hurts a.k.a. 面影ラッキーホール)『みっつ数える前にあんたは・・・ ふたつめの夜』@WWWO.L.H.(Only Love Hurts a.k.a. 面影ラッキーホール『みっつ数える前にあんたは・・・ ふたつめの夜』ひとつめの夜からホーンの入れ替わりがちょっとありましたが鉄壁のアンサブルでした。歌詞変えたあの歌は時世をしっかり見てるなあと感心もした。ただ見ている、見ているひとはいる。素晴らしい[image or embed]
— kai (@flower-lens.bsky.social ) Nov 9, 2025 at 1:07 痛恨の日程勘違いでみっつめの夜に行けないのが悔やまれる〜全3回なのに! アッキーも皆も元気でいて〜! P-VINEから出たアルバム3枚をリリース順にライヴでほぼ再現+αシリーズ。『Whydunit?』再現の『ひとつめの夜』 に続き、『typical affair』再現。チケ完売! 満員! 普段は段差があって見やすいWWW、今回は段差に勝る高身長が前に群がっててあんま視界ない! なんとか隙間から拝見。音は最高。 『typical affair』は行くとこ迄行ったというか、情景描写これ極まれりといった感で茶化す隙すらない作品でした。「ゴムまり」が顕著。リリース時、それ迄面白がってたひとがサーッと引いていった。ここでふるいがかかった印象があります。有り得る現実をいかに虚構(=物語)として聴かせるか。アッキーとシナヤンの徹底したリサーチ力と突き放した表現手法が冴え渡っており、安全圏にいると呑気に思っていたリスナーを屠殺場に引きずり出すような作品です。聴く側も無傷ではいられない。 しかし「ただ見ている、ただただ見ている」「見ているひとは必ずどこかにいる(=あなたはひとりではない)」というポリシーは徹頭徹尾貫かれており、見事としかいいようがない。嘲笑でもない、冷笑でもない。改めてその詩作の技と着眼点に唸りっぱなしであった。今更いうことではないかも知れないが「あたしだけにかけて」の生死と精子、賭けてと掛けてのダブルミーニングなんて鋭いにも程が……もはや凄みすら感じる。と、真面目に書いてしまう。冒頭のツイートに書いた「歌詞変えたあの歌」は「ピロートークタガログ語」→「ピロートークニッポン語」。フィリピンの、というMCからつい数日前に明らかになった陰惨な事件を思い出し身構えるがそのことではなく、今や立場が逆になっている現在を的確に更新する。 で、ここ迄残った(?)リスナーも真摯なもので、「ゴムまり」で悪ふざけするひとはいない訳ですよ。皆が聴き入り、フロアが静まり返る。アッキーの表現力/ストーリーテラーっぷりに恐れ入る。よっ、千両役者。表現力といえば「セカンドのラブ」の中森明菜式歌唱が素晴らしく、聴き取れるギリギリのウィスパーっぷりが最高でした。ストーリーテラーとしては「ゆびきり」が秀逸。てか今回MCが冴えまくっていて、元カノとの思い出が次の曲紹介へと美しく(?)着地するという芸当も見せてくれました。終わったあと「うまい! と膝打ちそうになった」「落語か」「どこ迄がホントなのか」「息をするようにホラを吹くから」という話で盛り上がる。そのスジの方の黒田さん、実在するのかしら……。「SO-SO-I-DE」も聴けてうれしかった! あらゆる属性を隠さない、透明にしないコール&レスポンスにも胸がすく思い。 ホーンには『1996年の面影ラッキーホール』 から再登場、中島カオリさんがいました。tsとfl。『ひとつめの夜』から参加のkey・伊藤隆博さんも、アッキー曰く「やめてません!」。よかったよかった。アッキーてなんだかんだいうても気遣いのひとですよね、というか意外と(失礼)ちゃんとした社会人。カオリさんがソロのときフロアを煽ったり、所属してたバンドを紹介したりさ。ゲストにもちゃんとリスペクトがある。 オーラスは恒例「東京(じゃ)ナイトクラブ(は)」。何度聴いても涙が出る。これも情景描写極まれりなんだけど、クラブシーンの刹那と愛情が詰まっている曲のように思える。そんなこといってもアッキーは「見たままとリサーチで書いただけ」っていいそうだけどね。3回のシリーズライヴが終わっても、ときどきライヴやってくれたらうれしいです! また会いたい! フロントアクトは町あかりさん。バックトラックに合わせテクノ昭和歌謡を唄う達者な芸風で素敵。「12年前にも呼んでいただいて」と話しており、うーん観たっけか、どうだっけ……と思っていたのだが(すみません)、終盤「では『コテンパン』という曲を……」といわれてあ゛ーーーッとなる。こてんぱーんの歌 だ!!!!! この歌定期的に頭の中で回るんだよ、今でも! もはや誰の歌だか忘れていた! それ程強度のある曲なんだよ、キャッチーで美メロで! 曲だけが残る、ある意味すごいことだ。 ナイロン100°Cの「なのなのいつでも生乾き〜♪」もそうなんだよ、洗濯物が乾かない季節になると定期的に回る。犬子さん(まだ漢字表記だった)と峯村さんが唄ったんだけど、どの作品の劇中歌だったかもはや思い出せない。
2025年11月01日(土) ■
『私を探さないで』
M&OPlaysプロデュース『私を探さないで』@本多劇場『シブヤから遠く離れて』から21年、遂に?勝地涼が岩松了作品で主演を…🎉 いいたかった言葉、いえなかった言葉を悉く成仏させる岩松術。緊張の続く会話で2時間がピンと保つ。感嘆のため息。『私を探さないで』[image or embed]
— kai (@flower-lens.bsky.social ) Nov 1, 2025 at 22:19 このあと調べてみたら、勝地さんは2021年に『いのち知らず』で岩松作品の主演を務めておりました 。これ見逃してるんだけど仲野大賀主演だと思ってた。勝地さんの事務所のHP見たらわざわざ「主演」て書いてあった。ご、ごめ……失礼しました! 結婚の報告のため、故郷の離島へ一時帰省した主人公。「17歳の男の子」だった彼は、再会した高校時代の同級生、担任教師との会話を通じ、失踪した女子生徒のことを思い出す。かつて彼女と主人公はのっぴきならない関係にあり、同様に主人公と担任教師との関係も微妙なものだった。教師は作家へと転身し、島で、学校で起こった出来事をモチーフにした小説はベストセラーとなる。そのことが地元を華やがせているようだが、かつての生徒たちは自分たちのことが小説に書かれていることを手放しで喜んではいない。 今回はインスパイア元としてスティーヴン・ミルハウザーの短編小説「イレーン・コールマンの失踪」が挙げられている(未読。読んでみたい!)。とはいうものの、不穏な台詞のやりとりは岩松節としかいいようがないくらいの精錬ぶり。なんでこんなにイライラするのに引き込まれてしまうのだろう。このひとの書く会話に魅せられている。取り憑かれている、といった方が合っているかもしれない。あ゛ーームカつくーーー! と思っていると「ポケットのなかにいるのは私でしょう?」なんて宝石のような言葉をブッ込んでくる。憎しみすら覚える(笑顔で)。 具象が少ない舞台(美術:愛甲悦子)、というのは岩松作品には珍しい。階段はなく、堤防がある。しかしそれは具象ではなく、見えない「向こう側」を観客に意識させる。向こう側にある海、向こう側にいる人物、向こう側にある生活。岩松作品の象徴でもある水はその最大値である海になり、それも姿を現さない。失踪した女子生徒は鮮やかなブルーの小物を身につけている(衣裳:伊賀大介)。服装が変わっても、必ず青がそこにある。ミステリアスでもあり、清潔でもあり、海のような昏さもある青。女子生徒を演じる河合優実によく似合う。 岩松さんが演じる、双子とはいわないがそっくりな兄弟の違いを衣裳ひとつで見せていたのも見事だった。見た目だけでなく、そのひととなりも感じとれてしまうのだ。小綺麗で統一感のある服を着た兄、トレーニングウェアの上はadidas、下はPUMAという、いかにも頓着がない弟。そのひととなりが透けて見えるようだった。小泉今日子演じる教師の、ドレープの効いたスーツも素敵。 被害者でいたい人物、加害者の方がマシだと思う人物、被害者と加害者を生んでしまったかもしれない人物。失踪した女子生徒への追憶を辿っても答えは出ない。正解もない。しかし目が、耳が舞台に釘付けになり続ける2時間。ずっとモヤモヤしている裏で、心はずっと高揚している。胸踊るような舞台だった。 岩松さんと蜷川幸雄の初タッグである『シブヤから遠く離れて』 は、舞台というものの刹那と永遠を見せてくれた。ふたりはその後何作もタッグを組んだ。本人たちにとっても大きな出会いだったのだろう、蜷川さんの没後も岩松さんはゴールド/ネクストシアターの面倒を見てくれた。その結晶ともいえる『薄い桃色のかたまり』 、『雨花のけもの』 は、忘れ難い美しい作品となった。舞台なので、その痕跡は関わった/目撃した者の心のなかにしかない。 『シブヤ〜』初演時、蜷川さんに徹底的にシゴかれたのが勝地さん(と蒼井優)。かなりペシャンコにされたそうだが、どちらにも手応えがあったのだろう、ここから勝地さんは何作も蜷川演出作品に参加する。しかし岩松作品に勝地さんが出る機会はなかなか訪れなかった。調べてみると、再会は2019年(『空ばかり見ていた』)のようだ。随分時間がかかった。果たして勝地さんは、岩松さんの書く美しい言葉を消化+昇華する力をつけていた。自身のものとして血肉化しないと、あの台詞群をああは語れないものだ。それは理解とは別物だ。他者に振り回される男が発する、迷い、惑い、抵抗と諦観の言葉の数々。 個人的には蜷川さんの追憶とともに今作を観てしまったようなところもある。というか、岩松さんの作品を観る度、いや、どの劇作家の作品でも、「蜷川さんならどう演出するかな」と思ってしまう。これはもう病に近い。少しの罪悪感と、それでもいいという開き直り。『シブヤ〜』のマリーも、『私を探さないで』の晶も、追憶のなかに生きる岩松作品の女性たちは、それでもいいといってくれるだろうか。 -----・岩松了が“具体的な美術ではなく抽象に挑戦した”「私を探さないで」幕開け┃ステージナタリー この舞台に関われて幸福ですが、観客として観たい!と願うも、それは叶わぬ夢。 みなさま、どうか私の目となり耳となりこのお芝居を存分に楽しんでください。 小泉さんのコメントが素敵。舞台を観ることが出来るのは観客だけなのだ・もう一度観たいあの舞台 Vol.3 杉原邦生・北尾亘が10年を振り返る┃ステージナタリー そこに〈演出家の不在〉を感じなかったことへの衝撃が大きい。〈演出〉という仕事は具体的に目撃したものや体感したものの印象が残りやすいけれど、実は、作品を満たし、上演中に流れているもの、あえて言葉にするならば〈空気〉のようなものにこそ、演出家の作家性が現れるのではないかと思っている。だからこそ、演出家の鼓動と息吹が消え、遺された作品やその上演から僕たちは、否が応でも演出家の〈不在〉を感じ取ってしまうのだと思う。では、なぜ蜷川さん亡き後に上演されたあの「海辺のカフカ」では〈不在〉を感じなかったのか。 とても好きな作品だけれど、「もう観られなくて良い。観られないから良い。」と思っている自分もいる。それが舞台の良いところだから。 おまけ。この連載、とてもいい企画だなー。杉原さんは『海辺のカフカ』を挙げている。 私も「もう観られない」ことが舞台の素晴らしさだと思っている/思いたいけれど、蜷川さんの作品に関してはまだその境地には至れない。今でもずっと、蜷川さんの舞台を観たいと思っているし、観られなくなったことに打ちのめされている